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大爆死から一転、大絶賛!公開当時大コケした名作日本映画(5)お蔵入りに最低記録…カルト映画になった理由は?

text by 寺島武志

人々の心に残り続ける名作映画が、必ずしも評価されていたというわけではないことをご存じだろうか。今では名を知らぬ者はいない世界の巨匠・北野武や宮崎駿も、公開時に大コケしてしまった過去を持つ…。それも意外な作品でだ。そこで今回は、公開時は大コケしたものの後に絶賛された日本映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)

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東宝創業以来最低の興行記録したカルト映画

『殺人狂時代』(1967)

仲代達矢【Getty Images】
仲代達矢Getty Images

上映時間:99分
監督:岡本喜八
原作:都筑道夫
脚本:小川英、山崎忠昭、岡本喜八
キャスト:仲代達矢、団令子、砂塚秀夫、天本英世、江原達怡、二瓶正也

【作品内容】

精神病院を経営する傍ら、「大日本人口調節審議会」という秘密結社を率いる溝呂木省吾(天本英世)の元へ、ある外国人男性が仕事の依頼を持ってくる。この人物は、かつて溝呂木とナチスの同志だった。

「大日本人口調節審議会」とは、人口増加による人口調節のため、世の中に役に立たないと判断された人物を秘密裏に始末することを目的にしていた。殺し屋は入院患者であり、溝呂木は自分の患者たちを“殺人狂”に育成していたのだ。

その外国人男性は仕事を依頼する前に、腕前をテストするといって、電話帳から無作為に選んだ3人の人物を殺せと溝呂木に命令する。3人のうち2人は簡単に殺害できたが、残りの1人が殺し屋を返り討ちにしてしまう…。

【注目ポイント】

ミステリー小説からショートショートなどの娯楽作まで幅広い作風を持つ都筑道夫の『なめくじに聞いてみろ』(旧題『飢えた遺産』」を原作に、当時すでに実績十分で一流監督となっていた“鬼才”岡本喜八のメガホンによって製作された本作。

岡本喜八監督に加え、主演は仲代達矢、その他のキャストも豪華で、ヒットが期待できそうな作品だが、企画段階からつまずく。

当初は日活で映画化される予定が、日活側の事情で映画化の話は一旦立ち消えとなる。その後、権利を東宝が買い取り、小川英と山崎忠昭によるシナリオを岡本が手直しした上で、難産の末、1966年に作品は完成する。しかし、東宝上層部の判断により公開直前で一度お蔵入りとなり、翌1967年にひっそりと公開された。

しかも勅使河原宏監督のドキュメンタリー映画『インディレース 爆走』との同時上映で、公開されたのが映画館から客足が遠のくといわれる2月だった。結果、本作は東宝創業以来最低の興行記録となり、さすがの岡本も、ひどく落ち込んだといわれている。

しかし本作は、アクション、ミステリー、スリルにサスペンス、コメディーとテンコ盛りの内容で、1980年代にリバイバル上映されるや、たちまち話題となり、昭和を代表するカルト映画という評価を得る。

作中、放送禁止用語のセリフが多用されるため、テレビで放送されることはないが、ソフト化された商品では、編集も消音処理もされることなく本作を楽しむことができる。

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