世界が熱狂…! 米アカデミー賞を制覇した日本映画の傑作(4)ジブリ史上最高傑作はやはり…その莫大な収益は?
世界共通の文化である映画。毎年素晴らしい作品には、栄誉あるアカデミー賞が贈られる。アカデミー賞を受賞した作品は後世に語り継がれる名作となり、人々の心に生き続けるものとなる。しかし日本映画がアカデミー賞を受賞するのは容易くはない。そこで今回は、米アカデミー賞を席巻した日本映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)
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アカデミー賞&ベルリン国際映画祭金熊賞受賞
『千と千尋の神隠し』(長編アニメ賞)
製作年:2001年
上映時間:125分
監督・原作・脚本:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
キャスト(声優):柊瑠美、入野自由、夏木マリ、内藤剛志、沢口靖子、我修院達也、神木隆之介、菅原文太、玉井夕海、大泉洋、上條恒彦、小野武彦
【作品内容】
10歳の少女・千尋は、両親と共に車で引越し先へと向かう途中に、神様やお化けたちが疲れた体を癒しに訪れる温泉町へと迷い込む。
その町の珍しさに千尋を置いてどんどん足を踏み入れていく両親。しかし町の掟を破った千尋の両親は豚に変えられた。
一人途方に暮れて町を彷徨う千尋。人間を拒絶するこの町で彼女は自分の名前を奪われ“千”という新たな名前を与えられ巨大な湯屋の下働きとして働くことになる…。
【注目ポイント】
『君たちはどう生きるか』が、今年のアカデミー賞で「長編アニメーション賞」を受賞する22年前の2002年に同賞を受賞した作品。
現在に至るまで、スタジオジブリ史上最高の興行収入を誇っている。その金額はリバイバル上映を含めるとなんと316億8000万円。この数字は金額ベースにおいて、邦画・洋画問わず日本で公開された全ての映画の興行収入ランキングで、2020年に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が新記録(404億3000万円)を達成するまで、およそ20年にもわたり、トップに君臨し続けた。
それまでは毎年、あるいは隔年で新作を発表してきた宮崎だが、1997年の『もののけ姫』を最後に、長年積もり積もった疲労のため、監督業を小休止、信州にある別荘で過ごし、世間では引退説も流れていた。
そんな宮崎が、別荘で読み耽っていたのは少女マンガ。時として彼は、少女マンガからヒントを得て、自身の作品に反映されることがあり、実際、脚本を務めた『耳をすませば』(1995年)や『コクリコ坂から』(2011年)は、原作が少女マンガだ。
しかし宮崎は、そこで読んだ数々の少女マンガのほとんどがラブストーリーであることに違和感を覚えていた。毎年夏、別荘にジブリ関係者の娘を招待し合宿を行っていた宮崎は、“幼いガールフレンド”と呼ぶ彼女たちへのプレゼントとして、次回作の創作意欲が復活する。
しかし、その内容は少女マンガにありがちな恋愛ものとは程遠い、10歳の少女・千尋を主人公とするファンタジー溢れる大冒険物語だった。老若男女問わず楽しめるそのストーリーは、子ども向けアニメの枠を超え、大人も楽しめるメガヒット作となる。
プロデューサーに鈴木敏夫、作画監督に安藤雅司、美術監督に武重洋二、音楽に久石譲と、長年ともに作品を製作してきた“チーム宮崎”が再集結した上で、盤石の体制で仕上げられた本作。
アカデミー賞受賞によって霞んでしまっているが、ベルリン国際映画祭では、アニメーション作品としては史上初の金熊賞(最優秀作品賞)も受賞する快挙を成し遂げていることも忘れてはならない。
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