2010年代で最も素晴らしい映画は? 10年に一本レベルの超名作(1)21世紀の最高傑作?鬼才が描く光と影
2010年代に発表された数々の名作の中でも、賞レースを席巻し、観客から受け入れられ、批評家を唸らせ、かつ、今に至るまで作り手の創作意欲を刺激し続けている映画を5本セレクト。約130年に及ぶ映画の歴史においても、傑作と呼ばれる作品は数少ない。ここでは、そんな稀少な作品群の魅力を解説する。(文・編集部)
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「21世紀の『市民ケーン』」という評言にふさわしい傑作
『ソーシャル・ネットワーク』(2010)
製作国:アメリカ
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:アーロン・ソーキン
キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、アーミー・ハマー、ジョシュ・ペンス、マックス・ミンゲラ、ラシダ・ジョーンズ、ルーニー・マーラ
【作品内容】
恋人のエリカにフラれたザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、女子学生の容姿を格付けするサイト「Facemash」を立ち上げ、大学から処分を受ける。ザッカーバーグはそれを機に親友のエドゥアルド・サベリン(アンドリュー・ガーフィールド)にCFO(最高財務責任者)を任せ「The Facebook」を立ち上げる。
人々が社会的(ソーシャル)であることの意味に新たな革命を起こす“Facebook”という新たなテクノロジーを生み出すため、ザッカーバーグは自身のアイデアを追求する。しかしその成功は、友人のエドゥアルドとの関係に亀裂を生み、やがて破局を迎える。
【注目ポイント】
歴史的な著名人を取り上げ、彼らが成し遂げた快挙や事件などを掘り起こした作品。例えば、米国政府の個人情報監視の実態を暴いた、元CIA職員エドワード・スノーデンの実話が基となる映画『スノーデン』(2016)や、イタリア高級ファッションブランド「GUCCI(グッチ)」の創業者一族の崩壊を描いた映画『ハウス・オブ・グッチ』(2021)はその類の作品だ。
2010年代には、伝説のバンド“クイーン”を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)や、“エルトン・ジョン”の半生を描く映画『ロケットマン』(2019)など、著名人に焦点を当て、彼らの人生の光と影を描く作品が注目を集めた。そんな一連の作品の中でも特に注目したいのが、世界最大のSNSこと”Facebook”の創設者であるマーク・ザッカーバーグの成功と苦悩を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』だ。
本作が上述した作品と異なるのは、故人の半生やすでに一線を退いたレジェンドの若き日を描くというのではなく、現在進行形で多方面に多大な影響力を持つ実業家を取り上げ、その内面に深く切り込んでいるという点。加えて、主人公の良い部分だけではなく物議を醸すような面についても忖度なしに切り込んでいる点が挙げられるだろう。
他者の気持ちに配慮せず、いつでも堂々と自己主張を繰り広げるザッカーバーグの姿は、地位と名誉と金を得るためには時にシビアで冷酷でなければならないビジネスの本質を浮き彫りにさせる。
そんな本作は、アカデミー賞で8部門にノミネートされ、脚色賞、編集賞、作曲賞の3部門で受賞。複数の時制を巧みに操り、権力者の孤独をあぶり出す鬼才デビッド・フィンチャーの演出は「21世紀の『市民ケーン』」という評言にふさわしい充実ぶりを示している。
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