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えっ…あのセリフは脚本にない!?日本最高のアドリブ俳優(4)恐怖が増大する狂気のユーモア…真の力を持つ名優

映画の撮影は、本番前にリハーサルをすることが一般的である。カメラや役者がどのような動きをするのか綿密に計算されて作られている。しかし、そうした段取りを裏切り、突然台本にはない動きをする役者がいる。そうした“リアル感”は計算外の面白さを生み出すこともある。今回は、撮影中にアドリブ芝居が多い役者を5人セレクトして紹介する。(文・野原まりこ)

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舞台出身の役者がみせるアドリブ

阿部サダヲ『死刑にいたる病』(2022)

阿部サダヲ
阿部サダヲGetty Images

原作:櫛木理宇
監督:白石和彌
脚本:高田亮
出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、宮﨑優、鈴木卓爾、佐藤玲、赤ペン瀧川、大下ヒロト、吉澤健、音尾琢真、中山美穂

【作品内容】

大学生の筧井雅也(岡田健史)は、24件の殺人容疑で逮捕された連続殺人鬼・榛村大和(阿部サダヲ)から、自身の犯した罪が1つだけ冤罪であることを告白され、自分が犯していない罪について、誰が真犯人かを調べてほしいと頼まれる。

雅也は中学生の頃、近所でパン屋さんを営んでいた榛村に恩を感じていたため、調査を引き受ける。

【注目ポイント】

コメディからシリアスまで、幅広く演じ分ける阿部サダヲ。舞台やドラマ、CMなど様々な媒体で活躍する阿部は、よく舞台でアドリブをすると聞く。

長年、生の舞台で培った勘や反射神経から繰り出されるアドリブで、客席を大爆笑の渦に巻き込む。一方、本作では、目の奥に闇が広がる凶悪殺人鬼を演じた。

そんなシリアスな雰囲気の漂う作品で、アドリブを繰り出すことなんてできるのかと思うが、本作でもその対応力が発揮されたようだ。

そのシーンは、阿部サダヲ演じる榛村大和が営むパン屋さんに、中学生時代の筧井雅也がパンを食べに来る場面で、ベーコンレタスサンドにオレンジジュースをサービスするシーン。本来台本にはない、「B.L.T.O」というセリフが発せられたそうだ。

そうしたアドリブは、本番中でも常に自分の役としての立場や、相手役との距離などを分析していないと出てくるものではない。その場に最適な言葉や行動を選び取ることはそう簡単ではなく、先述した通り、長年培ってきた反射神経の賜物である。

本作では、優しい顔の裏に悪魔の姿を隠した、観る者をゾワゾワとさせる阿部サダヲの芝居を観ることができる。

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