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絶望で最悪なエンディング…救いなき結末の傑作日本映画(2)親友が残虐ないじめに…ドン底に突き落とす結末は?

世間には見る者の心をドン底に突き落とすような後味の悪い映画が存在する。しかし、その後味の悪さは妙に後を引く。今回はそんな危険な魅力を孕んだ後味の悪い結末の日本映画をご紹介。結末の内容に深く切り込むため、物語のラスト(=ネタバレ部分)を記すので、未見の方は注意していただきたい。(文:村松健太郎)

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美しさと残酷さが同居する結末

『リリイ・シュシュのすべて』(2001)

市原隼人
市原隼人Getty Images

上映時間:146分
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
キャスト:市原隼人、忍成修吾、蒼井優、伊藤歩、勝地涼、五十畑迅人、郭智博、田中丈資、土倉有貴、南イサム

【作品内容】

それまでファンタジックなラブストーリーを中心とした作品を世に送り出してきた岩井俊二監督が、一転してティーンエイジャーのリアルを厳しく描き出した作品。若かりし日の市原隼人、忍成修吾、伊藤歩。蒼井優が揃った苛烈な青春劇。

【注目ポイント】

この作品までの岩井俊二監督と言えば『Love Letter』(1995)や『スワロウテイル』(1996)など音楽とファンタジックな世界観を絡めた作品で人気を集めていたが、本作では、幻想的なフィルターをとおして現実を眺める岩井美学を貫きつつ、残酷さを前面に押し出した作品になっている。

とはいえ、68分の珠玉の小品『PiCNiC』(1996)をはじめ、美しさと表裏一体となった暴力性は、それ以前の作品にも見出せたものであり、本作ではそれが顕著化した、という言い方が正確かもしれない。

また、本作はそれまで岩井作品に批判的だった評論家筋も手のひらを返したように絶賛モードに転じた作品でもある。

ある時期まで親友関係にあった雄一(市原隼人)と星野(忍成修吾)。しかし、沖縄旅行で星野が事故に遭い、瀕死の重体から急死に一生を得たのを機に、蜜月の日々は終わりを迎える。

不良となった星野は、雄一を含む多くの生徒をいじめの対象としていく。星野の行動はどんどんエスカレートし、恐喝・万引き援助交際の斡旋など過激化の一途をたどる。

映画の終盤、雄一が淡い恋心を抱いていた少女が星野の指示を受けた不良たちに犯されてしまう。徐々にふさぎ込むようになる雄一は、唯一の希望であるリリイ・シュシュのライブに向かう。

雄一は現実逃避の手段として、インターネットの掲示板で、見知らぬ他人とリリイ・シュシュに関する情報を交換し合うのを心の慰めにしていた。雄一にとっての心のオアシスであるネット掲示板。そこで意気投合した人物がおり、雄一はライブ当日に会う約束をしていたわけだが、あらわれたのはなんと星野だった。現実ではいじめる/いじめられる関係にある2人は、ネットの世界では精神的に結びついていたわけだ。

ライブ当日、雄一は人ごみに紛れて星野を刺殺する。

カリスマ歌手のライブ会場で起きた殺人事件。テレビは連日ショッキングなニュースを報じるが、雄一に疑いの目が向くことはなく、何事もなかったかのように日常は進んでいく。

映画は、放課後の音楽室に足を踏み入れた雄一が、かつて自身が救えなかった少女のピアノ演奏に耳を澄ませる場面で幕を閉じる。美しさと残酷さが同居する、観る者に言葉にならないエモーションを突きつける名ラスト。岩井監督が“遺作にしてもいい”というほど思いれのある一本。未見の方はぜひ一度観ていただきたい。

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