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『相棒』屈指の神回は? 成宮寛貴が最高…甲斐享編の傑作(1)悲劇への伏線…危うすぎる人間性を見せた回とは?

text by Naoki

優秀だが変人の刑事・杉下右京が、相棒と共に事件を解決していくドラマ『相棒』。2000年から2024年現在まで続くシリーズは約400話を超え、テレビドラマの他にも映画や演劇としても親しまれている。今回は、3代目相棒・甲斐享(成宮寛貴)の回の中でも伝説的なエピソードをセレクト。その面白さの真髄に迫る。(文・Naoki)

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最終章への伏線も…。甲斐享が持つ人間性とは?

●シーズン11「交番巡査 甲斐享」

賀集利樹【本人のインスタグラムより】
賀集利樹本人のインスタグラムより

放送日:2012年11月21日
脚本:徳永富彦
犯人役:賀集利樹

本作は”甲斐享という人間の危うさ”が描写されている。

サラリーマンである奥山誠の妻である深雪が自宅で殺害される。結婚前に深雪は久保というストーカーに硫酸をかけられるという被害にあっていた。その際に久保を逮捕したのが当時交番勤務だったカイトで、事件をキッカケに奥村夫妻とは交流があったのである。

久保は既に出所し、今回の事件現場でも彼の指紋が発見され、怒りに燃えるカイト。しかし右京は夫である奥山が犯人で浮気相手が協力者だったと突き止める。奥山は息子の実父が久保だと知ったのが動機だと語るも、右京は奥山が鑑定前から既に浮気をしていた事を言い捨てる。

奥山が犯人だと共有しなかった事に憤るカイトだが、逆に右京は私情で奥山へ疑いを向けなかったカイトを責める。「我々は殺人事件の捜査をしてるんですよ! 人が人を殺すんですよ! そこに私情を挟む事など決して許されません。我々の仕事は犯罪者を捕まえる事です」完全な正論を言われたカイトはやり場の無い怒りを右京のチェスに向ける事しかできなかった。

右京の前任者である亀山薫と神戸尊は両名共に年齢も中堅で至らない点こそあっても警察官としての考え方は確立されていた。しかしカイトは彼等と違い、情に流され被害者にも犯人にも必要以上に感情移入をしてしまう。このようなミスや過ちを右京が正して成長させていくというのが、カイト期の見所だという事を確立させた。今回以降もカイトは必要以上に被害者や犯人に感情移入をしてしまうが、それが彼の良い点でも悪い点でもあるので、そこを踏まえ今後の作品を観るのも楽しいと思われる。

また本作は卒業回である「ダークナイト」の伏線にもなるような描写がある。交番勤務時代に久保を追う際、カイトは鬼気迫る表情で久保に拳銃を向け殺す寸前にまでなっていた。被害者の奥村達への感情移入が行き過ぎて一線を越えかける危うさ…。これを右京が止められなかったのが残念でならない。

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