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上半期の民放ドラマ、 最も優れた演技をみせた女優は?(5)歴史に残る名演…近年まれに見る傑作の立役者は?

胸キュン必至の恋愛モノや、胸を打つ医療モノをはじめ、2024年の上半期は話題作に恵まれた。作品がヒットする要因は多くあるが、役者の働きによるところは大きい。そこで今回は、中でも素晴らしい活躍を見せた女優を独自の視点で選出。殊勲賞、敢闘賞、技能賞、準MVP、MVPに分けて、その芝居の魅力を解説していく。(文・あまのさき)

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今期最大の名作を生み出した立役者

MVP:杉咲花『アンメット ある脳外科医の日記』

女優・杉咲花【Getty Images】
女優杉咲花Getty Images

 今期のドラマで頭一つ抜きん出る作品となったドラマ『アンメット』で主演を務めた杉咲花について触れないわけにはいかないだろう。

 杉咲が演じたのは、2年前の事故の影響で記憶障害を抱える脳外科医・川内ミヤビ。過去2年間の記憶がなく、今日のことも明日には忘れてしまう。残念ながら治療の方法はなく、薬で現状維持をする日々。新しい記憶が蓄積されないというのは、どんなに不安なことだろうと思う。

 だが、ミヤビの周りには彼女を深く理解し、大事に思う人々がいて、決して悲しみに暮れる日々を過ごしているわけではない。それでもやはり、ふとした瞬間に覚えていないことに対する寂しさや切なさみたいなものがほろりと表出する。

 幾層にも重なった人間の感情の襞(ひだ)を持ち前の繊細な演技で見事に表現してみせた杉咲花に、毎週、魅了させられた。

 印象的だったのは、やはり最終話のミヤビと、彼女の同僚でかつて婚約者だった脳外科医の三瓶友治(若葉竜也)のやり取りだろう。

 脳梗塞が完成するまでに残された時間を、2人で過ごすことにしたミヤビと三瓶。ミヤビは、三瓶のことを毎日忘れる。だけどそこには確かに愛情があって、それは頭ではなく“心”が覚えている。積み上げられた2人の時間と、近づく距離感からそれがわかる。

 しかし、ミヤビは自分の身に迫っているリミットを感じていたのだろう。ソファでうたた寝をする彼の寝顔を見て、零れ出す感情が止められず、堰を切ったように目から涙がこぼれる。この光景をずっと覚えていたい。だから、三瓶の寝姿を絵に描き残した。「いつまでも忘れません」という言葉とともに。

 最終話で明らかになった、2人の出会いから婚約までの回想シーンも圧巻だった。どのエピソードもまるでドキュメンタリーを観ているような気持ちにさせられたが、とりわけクライマックスのシーンは、相槌やお互いを見つめるサマが、人間そのものだった。杉咲が、そして若葉が、役を生きていた。

 全話神回といっても過言ではない名作となった『アンメット』は、人々の記憶に、心に、残り続けるに違いない。

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