その輝きは永久不滅…90年代日本のアニメ映画、最高傑作は?(2)早逝の天才…数々の伏線がエグい極上の名作
今や日本のカルチャーの代名詞であるアニメ。1990年代はアニメを取り巻く状況が大きく変化した10年であった。テレビアニメは広告収益だけでなく「OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)を収録したVHSを小売りする」ビジネスに変化していき、深夜アニメも一気に増えた。今回は90年代の名作アニメ映画を5本紹介。(文・ジュウ・ショ)
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今敏自身による作品解説付きのBlu-ray版がお勧め
『パーフェクトブルー』(1997)
上映時間:81分
監督:今敏
脚本:村井さだゆき
原作:竹内義和
キャスト:岩男潤子、松本梨香、辻親八、大倉正章、秋元羊介、塩屋翼、堀秀行、篠原恵美、江原正士、梁田清之、古澤徹、新山志保、古川恵実子
【作品内容】
人気絶頂のなか、アイドルグループから脱退して女優に転身した未麻。ある日、彼女のもとに脅迫めいたFAXが届く。また勝手に『未麻の部屋』というWebブログが開設され、彼女の行動は逐一記録されている。そんななか未麻は「プライベート」「アイドル」「女優」と、どの顔が本当の自分なのかわからなくなっていく…。
【注目ポイント】
急逝した天才・今敏の初監督作品にして、世界三大映画祭の一つであるベルリン国際映画祭に出品された、いまだにカルト的人気を誇る名作だ。
今敏は2000年代に入って、『千年女優』(2001)『東京ゴッドファーザーズ』(2003)『パプリカ』(2006)と次々にアニメ映画作品を発表。「アカデミー賞長編アニメ映画賞候補作品」に2度も選出されるなど、間違いなく1990年~2000年代を代表するアニメ監督の一人だ。早逝したのが本当に悔やまれる。
彼の作品の多くは「虚構と現実」をテーマにしているが、初監督作品の『パーフェクトブルー』でも、その特徴がありありと出ている。
主人公の未麻はアイドルから女優に転身。アイドル時代の未麻の思い出を引きずるファンからストーカー被害を受ける。そんななかで横軸として「アイドル」「女優」「プライベート」と3つの人格が形成されていき、縦軸では「現実」か「夢」か「演技」かの区別がつかなくなる。
ここで「現実」か「夢」か「演技」かを説明しないのが絶妙だ。現実の話だと思っていたら、夢から覚めたりする。また夢の話だと思っていたら、役の台詞だったり…と、観客も巻き込まれていく。シュルレアリスム的な世界観がたまらない作品だ。
ちなみに筆者はBlu-rayを持っているが、映像特典として今敏自身が作品解説をしてくれる『パーフェクトブルー講座』が付いている。そこで今敏は「すべての絵に”意図”を入れている」と語っていた。
冒頭の「ヒーローショーの場面」から幾重もの伏線が張り巡らされているので、その点も踏まえてぜひ、二度、三度と繰り返し鑑賞してほしい。
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