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90年代日本のアニメ映画、最高傑作は? 永久不滅の名作(4)マジ怖い…子供たちにトラウマを植え付けたのは?

今や日本のカルチャーの代名詞であるアニメ。1990年代はアニメを取り巻く状況が大きく変化した10年であった。テレビアニメは広告収益だけでなく「OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)を収録したVHSを小売りする」ビジネスに変化していき、深夜アニメも一気に増えた。今回は90年代の名作アニメ映画を5本紹介。(文・ジュウ・ショ)

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多くの人の心にトラウマを植え付けた“最も怖いクレヨンしんちゃん映画”

『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(1996)

クレヨンしんちゃん
クレヨンしんちゃん公式Xより

上映時間:97分
監督:本郷みつる
脚本:本郷みつる、原恵一
原作:臼田儀人
キャスト:矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、田中秀幸、大塚芳忠、古川登志夫、辻親八、深雪さなえ、渕崎ゆり子、保志総一朗、八奈見乗児、納谷六朗、高田由美、富沢美智恵、真柴麻利、林玉緒、鈴木みえ、佐藤智恵、大塚智子、玄田哲章、大滝進矢、塩沢兼人、雛形あきこ

【作品内容】

 しんのすけは、幼稚園の遠足で「群馬ヘンダーランド」に出かける。しかしそこは、地球を侵略しようとする魔女の本拠地だった。しんのすけはみんなとはぐれ、魔女によって閉じこめられた少女と出会う。しんのすけは、彼女を助けるために仲間と力を合わせる…。

【注目ポイント】

 大人になってクレヨンしんちゃんのアニメ映画を見ると、なぜか泣いてしまうのは私だけだろうか。あの一所懸命でピュアな家族愛が、30歳を超えたあたりからなぜか猛烈にしみてくる。劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズは名作ぞろいだ。

 そのなかでも、屈指の異色作として知られる本作。もちろんいつものギャグもある。最後には泣ける要素もある。しかし何より、他にはないホラーテイストが目を引く。とはいえ、風変わりなだけが取り柄の作品ではない。クオリティーも素晴らしいのだ。実際、合計31作品(2024年6月現在時点)にのぼる劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズにおいて、「ヘンダーランドが一番の名作だ」という意見は多く聞かれる。

 本作を傑作たらしめているもの。それは、悪役の一人、ス・ノーマン・パーの存在である。教育実習生としてやってきた悪者なのだが、喋りが上手くしんのすけ以外の全員を騙すことに成功する。しんのすけが「あいつは悪者だよ」といくら説得しても周りは聞いてくれない。
 
 そんな状況下で恐怖に加えて孤独を強いられるしんのすけ。まるで「宗教団体に迷い込んだ男の子」といった構図である。ホラーテイストのこの描写、とにかく怖さが半端ない。子どもはもちろん大人も思わず鳥肌が立つレベルなのだ。その点、多くの人にトラウマを植え付けた作品でもある。

 また、本作は『クレヨンしんちゃん』シリーズのターニングポイントとなった作品として知られている。本作の後、野原家にはひまわりが生まれ、お兄ちゃんとなったしんのすけの活躍が描かれるケースが増えていくのだ。

 内容面のみならず、製作面においてもシリーズの転機となった作品でもある。初期からアニメ監督を務めていた本郷みつるは本作を最後にいったん降板。次作の『暗黒タマタマ大追跡』(1997)からは原恵一が監督となった。こうした背景から「初期の総決算的作品」と目されている作品でもある。

 たんなる子ども向けシリーズの一篇と侮ることなかれ。筆者は90年代を代表するアニメ映画に本作を選出することにためらいを覚えない。シリーズに馴染みない人が見ても思わず引き込まれる仕掛けに満ちた素晴らしい作品である。

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