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80年代の日本映画、最高傑作は? リメイクしてほしい名作(3)謎の死を遂げた監督の代表作がスゴすぎる

text by 編集部

空前のバブル景気が到来した1980年代は、日本にとって特別な時代だった。今やすっかりジリ貧になってしまった日本だが、当時の映画をリブートすることで、あの頃の気持ちに戻れるかもしれないー。というわけで、今回は1980年代のヒット作を令和にリメイク、あるいはリブートしたらというテーマで、作品を5本紹介する。(文・編集部)

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伊丹十三の才気が光る! 国税局査察部が題材の「女」シリーズ第一作

『マルサの女』(1987)

宮本信子
板倉亮子役の宮本信子Getty Images

上映時間:127分
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
出演:宮本信子、津川雅彦、山﨑努、橋爪功、大地康雄、小林桂樹、岡田茉莉子

【あらすじ】

やり手の税務署調査官・板倉亮子はある日、捜査対象として、あるラブホテルに目をつける。しかしオーナーの権藤はなかなか馬脚を現さない。そんな中、亮子は国税局査察部(マルサ)に抜擢。上司の花村とともに再び権藤に挑む。

【注目ポイント】

 1980年代は、日本が空前の好景気に沸いた時代だった。プラザ合意に端を発するこの好景気では、街に金とタクシーがあふれ、ヤクザまがいの地上げ屋が土地の転売を繰り返していた。そんな1980年代の狂騒が最も如実に出ている作品が、この『マルサの女』だろう。

 本作は国税局査察部をテーマとした伊丹十三監督作品。主人公の板倉亮子を伊丹のパートナーである宮本信子が演じる。

 本作の最大の魅力は、国税局査察部(通称マルサ)というテーマの斬新さだ。このマルサ、今でこそさまざまな映画のドラマの題材になっているものの、当時はまだそれほど広く知られていなかった。しかし、伊丹はそんな一見小難しそうなテーマを「宝探し」というフィルターを通して見せることで見事にエンターテインメントに昇華している。

 また、人間味あふれたキャラクター描写も大きな魅力の1つだ。特に、亮子の最大の敵となる権藤は、作中で息子愛に溢れる心優しき父親として描かれており、悪役でありながらも憎めない人物として描かれている。

 さて、本作を令和の今の世の中でリブートするのは少し難しいかもしれない。マルサというテーマはもはや目新しいものではないし、バブル全盛の当時とでは経済状態がまるで違うからだ。その上であえて本作をリブートするならば、ホリエモンのようなIT社長や人気Youtuberが捜査対象になるだろう。

 ただ、本作の目玉である下品で生々しいお色気シーンはコンプライアンスに引っかかるためカットだ。もしお色気を盛り込みたいなら、ポルノ映画として出すしかないだろう(ポルノ映画の枠でリリースするのは新しいかもしれない)。

 さて、この「女シリーズ」はその後『マルサの女2』(1988)、『ミンボーの女』(1992)、『スーパーの女』(1996)と続き、1997年公開の『マルタイの女』で打ち止めとなった。監督である伊丹が自宅マンションから投身自殺を図ったからだ。この死は、表向きには自殺として片づけられているものの、未だ不審な点が多く、真相は明らかになっていない。

 鋭敏な感性と大胆な発想で、数多くの名作を世に送り出してきた伊丹。もし彼がこの令和の世の中に生きていたら、どんな映画を作っていたのだろうか。

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