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民放ドラマで“主役を食った俳優”は? 歴史に残る名演技(3)国民が大号泣…すべてをかっさらった天才は?

text by 寺島武志

ドラマが名作になる条件の1つに、主人公だけでなく脇役にも魅力があることが挙げられるだろう。中には、主人公を食ってしまうほどの存在感を放ち、ドラマ終了後も視聴者の脳裏に存在を刻みつける存在も少なくない。今回は過去に放送された民放ドラマで、最も異彩を放った名脇役5人をセレクト。作品の魅力とともに紹介する。(文・寺島武志)

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当時5歳の神演技にみなが涙した…。

『Mother』芦田愛菜(道木怜南《鈴原継美》役)

芦田愛菜
芦田愛菜Getty Images

放送期間:2010年4月14日~6月23日
放送時間:水曜22:00~22:54
放送局:日本テレビ系
脚本:坂元裕二
最高視聴率:16.3%
キャスト:松雪泰子、山本耕史、尾野真千子、高畑淳子、酒井若菜、倉科カナ、綾野剛、田中裕子、市川実和子、音尾琢真、長谷川公彦、吉田羊

【作品内容】

自身も母親に捨てられ、児童養護施設で育ち、北海道室蘭市で小学校の教諭をしていた鈴原奈緒(松雪泰子)は、教え子の道木怜南(芦田愛菜)が極寒の中でゴミ袋に入れられ、捨てられているのを発見する。

それを見た奈緒は怜南の母親になることを決意し、彼女を誘拐し、母子になりすまして逃避行する。奈緒によって「継美」と名付けられた少女は成長していくが、最後には奈緒が逮捕されてしまう。

【注目ポイント】

トレンディードラマで名を上げた坂元裕二が、一時休業を経て転換期を迎えた作品であり、「母性」をテーマにしたサスペンス色の濃い作品だ。女性たちが自らの奥底にある「母性」を発見し、時に戸惑い、翻弄され、そして心の拠り所として、人間として成長していくストーリーを描いている。

主人公を演じた松雪泰子が約12年ぶりの連ドラ主演。田中裕子は民放の連ドラ出演は24年ぶり。NHK朝ドラ『ウェルかめ』のヒロインだった倉科カナは民放プライムタイムの連ドラは初出演。尾野真千子は民放地上波の連ドラ初出演というキャスティングも話題となった。

しかし、本作のハイライトは何といっても当時5歳にして、母親からネグレクトを受ける少女・怜南を演じた芦田愛菜の天才子役ぶりだろう。

実はオーディションの規定では7歳以上だったが、所属事務所がダメ元で芦田を推薦し、審査を受けさせた結果、坂元が惚れ込み、芦田の起用が決定する。芦田の起用にあたって、坂元は栄養失調の設定や話し方など、脚本に変更を加えたほどだ。

奈緒によって、「鈴原継美」という新しい名前を授かった怜南役に扮した芦田愛菜は、その期待以上の演技を見せる。作品としても大成功を収め、韓国やトルコでリメイクされ、そのいずれもが、子役の発掘に成功し、大ヒット作となっている。オリジナル版に出演した「芦田愛菜」という存在がなければ、ここまでのムーブメントはなかっただろう。

長回しのシーンも多かった本作。主演の松雪でさえも「撮影後、燃え尽き症候群のようになってしまった」というが、芦田は不幸を背負った少女を見事に演じ切った。その後の活躍ぶりは記すまでもないだろう。

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