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民放ドラマで“主演を圧倒した俳優”は? 歴史に残る名演技(5)「主役を食うつもり」を有言実行したのは?

text by 寺島武志

ドラマが名作足り得る条件の1つに、主人公だけでなく脇役にも魅力があることが挙げられるだろう。中には、主人公を食ってしまうほどの存在感を放ち、ドラマ終了後も視聴者の脳裏に存在を刻みつける存在も少なくない。今回は過去に放送された民放ドラマで、最も異彩を放った名脇役5人をセレクト。作品の魅力とともに紹介する。(文・寺島武志)

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菜々緒「主役を食うつもり」を有言実行

『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』菜々緒(橘カラ役)

菜々緒【Getty Images】
菜々緒Getty Images

放送期間:2015年10月20日~12月15日
放送時間:火曜 22:00~22:54
放送局:フジテレビ系(関西テレビ制作)
脚本:佐藤嗣麻子
原作:山崎紗也夏
最高視聴率:12.9%
キャスト:松坂桃李、木村文乃、北山宏光、高田翔、西尾宇宙、岡崎紗絵、要潤、山口紗弥加、光石研、大杉漣、船越英一郎

【作品内容】

警視庁機動捜査隊に所属する里見偲(松坂桃李)と、相棒刑事の猪熊夕貴(木村文乃)は、コンビでもあり恋人同士。同部署で恋愛関係にあることがバレればどちらかが異動させられてしまうため、周囲には交際を隠していた。

ある日、里美がキャバクラで変死体が発見された現場で謎の美女・橘カラ(菜々緒)と出会ったことで、2人の運命は大きく変わり始める。

キャバクラでの事件以降、各地で変死事件が相次いで起こり、里美は調べを進めていくうちに「橘カラ」との関連を疑う。一方でカラは、猪熊に何故か興味を持って接触し、交友関係を持ちながら、その裏では里美のアパート向いのマンションに暮らす男(光石研)の部屋に転がり込み、2人を監視していた…。

【注目ポイント】

山崎紗也夏の同名漫画を原作に、現代的な犯罪に挑む恋人同士の機動捜査隊員の活躍と、謎の美女との対決を描くクライム・ラブサスペンス。概ね原作に沿った展開だが、終盤ではドラマオリジナルの展開となる。

カラの正体はシリアルキラーであり、「橘カラ」という存在は、カラの親友だった「サチ」がカラを殺害し、その戸籍を奪って顔を変えて成り代わったものだと判明する。

後半、自分に疑いを向ける里美を猪熊から引き離すことに成功したカラは、その魔の手を猪熊に向け、彼女を監禁する。拘束した猪熊に、最初に殺人を犯したのは14歳でその相手は父親だったと、カラは大量殺人者となった自分の半生を語り始める。

人を殺すことで、相手の持つ優しさや自信を手に入れてきたと語るカラは、今度は猪熊が持つ正義感が欲しくなったと微笑むのだった。

前述したように、本作は原作漫画とドラマで終盤の展開に大きな違いがある。ドラマ最終話では、なんとカラと猪熊が実は生き別れの双子だったことが判明するのだ。

里美に救出された猪熊によって、カラは射殺されたと思われていたが生存。顔を整形前に戻して、猪熊を再度監禁し、自分が猪熊に成り代わる。違和感を覚えた里美たちの追跡によって、遂にカラは逮捕される。

壮絶な過去と殺害願望を持つサイコパスの女性・カラを演じ切った菜々緒。抜群のスタイルによる美しさは勿論、里美や偶然居合わせた犯罪者を相手に本格的なアクションシーンまで披露した。

その“完全悪女”の演技が高評価を得て、「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」、「ザテレビジョンドラマアカデミー賞」助演女優賞、「ギャラクシー賞テレビ部門2015年12月度月間賞」を受賞。本作を機に“悪女キャラ”女優としてのポジションを確立した。

本編放送前のスペシャルインタビューで、菜々緒は、主人公の松坂桃李と木村文乃を立てた上で、「主役を食うつもりで演じます」と語っている。そして有言実行、本作において最も強烈な印象を残した。

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