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デビュー作で日本に衝撃を与えた天才女優は? 伝説の作品(3)村上春樹の世界に溶け込んだ類まれなる才能は?

text by 市川ノン

今や映画界に欠かせない存在となった女優にも、スターダムに上り詰める最初の一歩があった。特別な輝きを放つ彼女たちは、デビュー当時から強烈なインパクトを残し、多くの観客を虜にしてきた。そこで今回は、今をときめく女優たちの衝撃のスクリーンデビュー作を5本セレクトして紹介する。(文・市川ノン)

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堂々とした芝居で伝説のヒロインを体現

●水原希子『ノルウェイの森』(2010)

水原希子【Getty Images】
水原希子【Getty Images】

監督:トラン・アン・ユン
脚本:トラン・アン・ユン
出演:松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子

【作品内容】

 高校時代、親友であるキズキ(高良健吾)を自殺で失ったワタナベ(松山ケンイチ)は、大学進学のため上京していた。そこで、キズキの恋人だった直子(菊地凛子)と出会い、恋人関係になる。しかし、直子は神経を病んでおり、療養所へ。必死に支えるワタナベの前にあらわれたのは、同じ大学の緑(水原希子)だった。

 原作は言わずと知れた世界的作家、村上春樹の『ノルウェイの森』だ。監督は『青いパパイヤの香り』(1993)『シクロ』(1995)を代表作とし、耽美的な作風で知られるベトナム出身のトラン・アン・ユン。村上から映画化の許可を得るまで4年かかったという労作である。

【注目ポイント】

 当時18歳で、演技経験のなかった水原希子が緑役に大抜擢された。ファッションモデルだった彼女を知ったスタッフが推薦して、オーディションを受けることになったという。

 水原が演じたのはワタナベの大学の友人である緑。ときどき、大学で顔を合わせる程度の関係であったが、後に男女の仲となる。

 同じくワタナベと恋人関係だった直子(菊地凛子)と緑は対照的だ。直子は神経を病み、療養所で暮らす女性で、口ぶりもどこか自信なさげで瞳にも影が入っている。一方の緑は、家庭環境に問題があるものの、明るく朗らか。大きな口と厚い唇でハキハキ話し、自信に満ちている様子だ。

 月と太陽のような2人だが、水原は新人であるにもかかわらず、その存在感たるや、映画『バベル』(2006)でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、当時すでに役者としての評価を不動のものにしていた菊地凛子に勝るとも劣らない。

 水原は過去のインタビューで、映画を撮り終えてから、自分がどんどんポジティブになって、緑に似てきたような気がする、といった発言を残しているが、自身が証言するとおり、緑のキャラクターは彼女の現在のイメージを決定づけたに違いない。

 水原はこの作品をきっかけに映画やドラマへの出演が増加。その一方で、ハラスメントの告発、コスメブランドの設立、女性向けセルフプレジャーグッズのアンバサダーに就任するなど、俳優、モデルの枠に収まらない無二の存在となった。
 

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