ドラマ史上最高の“フラれ役”は? 不憫な役がハマった俳優(3)視聴者が泣きながらツッコんだ伝説のキャラは?
視聴者の胸を打つ恋愛ドラマにはどんな条件があるだろうか。主人公やヒロインの見た目や性格が良い? 設定が面白い? どれも大事な要素だ。しかし、筆者が考える条件は、ある意味で主人公よりも魅力的な「最高の当て馬がいる」ことだ。そこで今回は、扱いがいつも不憫だけど愛すべき当て馬俳優を5人セレクトして紹介する。(文・かんそう)
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全視聴者が「マジでお前なにやってんだよ…」と涙を流した
●藤木直人『プロポーズ大作戦』
脚本:金子茂樹
演出:成田岳、加藤裕将、初山恭洋
出演:山下智久、長澤まさみ、榮倉奈々、平岡祐太、濱田岳、三上博史、藤木直人
「当て馬」という言葉がいつから広まったのか、その起源は定かではないが日本を代表する当て馬俳優の1人として、ドラマ史に君臨しているのが藤木直人だ。彼の最大の特徴であり魅力は、そのルックスとのギャップにあると筆者は感じている。
知性のある雰囲気とはっきりとした目鼻立ちの誰もが認める正統派のイケメンながら、どこか抜けた性格のキャラクターを演じさせれば藤木直人の右に出るものはいない。
その最たる例が、2007年放送のドラマ『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)だ。主人公・岩瀬健(山下智久)が結婚式のスライドショーの写真に写る過去にタイムスリップし、幼馴染・吉田礼(長澤まさみ)との思い出を1枚ずつやり直すというストーリー。藤木直人が演じた礼の恩師であり婚約者・多田哲也は「伝説の当て馬」として今も語り継がれている。
この世に恋愛ドラマは星の数ほどあれど結婚式の最中にフィアンセに逃げられた男はそう多くはないだろう。しかも多田のスゴいところは最終的に自分から手を離すというお人好しさにある。最終話、健のスピーチに心が揺れる礼。そんな彼女の想いを察した多田は、ある賭けを提案する。
「二十歳の誕生日の時と同じ顔してる。あの時は前からずっと抱えていた問題の答えを探すか、目の前のコンペの課題を取るか、どっちにするかで迷ってたでしょ? 今、あの時と同じ顔してる。もし礼が迷ってるんだったら、今から賭けをしない?」スーツのカフスボタンを外し、片手に握る多田。
「確率は二分の一。もし、ボタンのない方を選んだらキレイさっぱり諦める。もしボタンがある方を選んだら、今抱えてる問題をハッキリさせてくる。大丈夫、僕たちが本当に離れない運命にあるんだったら、心配ない」と、ためらいながらも、多田の右手に触れる礼。その手の中にはボタンが。
「行ってきな。礼が選んだんだよ? ほら、礼」そう言って礼を送り出す多田。手を開くとなんと左手にも、ボタンが。「はぁ、何やってるんだろ…」全視聴者が「マジでお前なにやってんだよ…」と涙を流したことだろう。
相手の幸せのためならば、式の最中だろうがなんだろうが婚約者を恋敵へと送り出す。それが一流の当て馬の矜持なのかもしれない。
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