ドラマ史上最高の“フラれ役”は? 不憫な役がハマった俳優(5)ドラマ史上最も残酷で美しい…究極の当て馬は?
視聴者の胸を打つ恋愛ドラマにはどんな条件があるだろうか。主人公やヒロインの見た目や性格が良い? 設定が面白い? どれも大事な要素だ。しかし、筆者が考える条件は、ある意味で主人公よりも魅力的な「最高の当て馬がいる」ことだ。そこで今回は、扱いがいつも不憫だけど愛すべき当て馬俳優を5人セレクトして紹介する。(文・かんそう)
————————————
近年の恋愛ドラマ史上、最も残酷で最も美しい当て馬
●中川大志『Eye Love You』
脚本:三浦希紗、山下すばる
演出:岡本伸吾、福田亮介、加藤亜季子
出演:二階堂ふみ、チェ・ジョンヒョプ、中川大志、山下美月、清水尋也、立川志らく、ゴリけん、鳴海唯、絃瀬聡一、玄理、杉本哲太
最後に紹介したいのが、日本のドラマにおける“当て馬史”を語るうえで決して外すことができない俳優・中川大志だ。中川大志といえば、2018年放送のドラマ『花のち晴れ~花男 NextSeason〜』(TBS系)で馳天馬役が代表的な当て馬だったのだが、2024年放送のドラマ『Eye Love You』(同局)にて、当て馬界の歴史にまた新たな1ページを刻んでいた。
彼の凄さとは、なんと言っても全身からにじみ出る「報われないオーラ」だろう。どこからどう見ても隙がないデキる男を演じながら、視聴者に「ああ、絶対に結ばれないんだろうな」と思わせる当て馬力がある。
中川大志演じる花岡彰人は、10年間に渡って主人公・本宮侑里(二階堂ふみ)に想いを寄せながらも、彼女の「恋愛はしない」という意思を尊重し、ビジネス・パートナーとして彼女を側で支えるという選択をした。そして、そんな彼女に好きな男ができるやいなや自分の気持ちを直接伝えることなく黙って身を引く、自己犠牲の塊のような男なのだ。
そして、このドラマが秀逸なのは「言葉で伝えなくても伝わってしまう」という点。侑里は、目が合うと他人の心の声が聞こえてしまう特殊能力の持ち主。この力ゆえに、口にしていない想いもイレギュラーな形で届いてしまう。そこで起こる心の揺れが、今までのドラマにはない繊細な機微を生み出しているのだが、5話では、とんでもないことが起きてしまう。
留学生のテオ(チェ・ジョンヒョプ)とのもどかしい関係を続けていた侑里に対し、花岡は背中を押すようにこう言葉をかける。「一応言っとくけど、社内恋愛がダメってルールはないから」それを聞いて、動揺する侑里に花岡はさらにこう告げる。「誰でも気づく」。恥ずかしそうに花岡のほうを見ると、不意に目が合ってしまう。そして彼の心の声が聞こえてくる。
「俺はもういい、これでいい。これでいいんだ。ずっと好きだった」
こんな悲しい結末が未だかつてあっただろうか。他の当て馬は皆どんな形でも一応「告白」だけはできていたのに、花岡はそれさえ許されない。それなのに、好きだという気持ちだけは相手に全て伝わってしまう。
近年の恋愛ドラマ史上、最も残酷で最も美しい当て馬の姿がここにはあった。
以上、「扱いがいつも不憫だけど 愛すべき当て馬俳優5選」とさせていただいたが、これほどまで視聴者の心に残るキャラクターを生み出している彼らはもはや当て馬などではない、立派な主役馬だ。
【関連記事】
ドラマ史上最高の“当て馬俳優”は? 不憫で愛すべき二番手の男(1)
ドラマ史上最高の“当て馬俳優”は? 不憫で愛すべき二番手の男(2)
ドラマ史上最高の“当て馬俳優”は? 不憫で愛すべき二番手の男(全紹介)