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「絶対に助からない…」”世界の終わり”を描く映画(5)。ここまで狂うか…核兵器の恐怖を描く名作

text by 寺島武志

新型コロナウイルスの流行によって人々の暮らしは一変した。今後、さらに恐ろしい災難がやってこないとは限らない。今回は世界滅亡の危機を描いた作品を5本セレクト。惑星衝突、パンデミック、異常気象…。映画を通じて”世界の終わり”を追体験することで、いつかくるかもしれないXデーに対して心の準備をしておくことは無駄ではないだろう。(文・寺島武志)

●核戦争で世界終了…。現在だからこそ観たいブラックコメディの名作

『博士の異常な愛情』(1964)

公開時のアメリカ版ポスターGetty Images

原題:Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
製作国:イギリス・アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック、ピーター・ジョージ、テリー・サザーン
キャスト:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン

【作品内容】

正式なタイトルは『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』。映画が作られた1964年当時、アメリカとソ連(現ロシア)は冷戦下にあり、熾烈な核実験競争を繰り広げていた。本作では、いつ第3次世界大戦が起こってもおかしくない、不安な時代が映し出されている。

【注目ポイント】

アメリカの空軍基地の司令官が精神に異常をきたし、本来であれば、政府中枢が敵の先制攻撃を受けた場合に限られる「R作戦」を命令したことで、爆撃機が出発してしまう。

狂気を抱えたバック将軍を演じたのは名優ジョージCスコットGetty Images

一方のソ連は、アメリカ側のアクションを受け、水爆攻撃に自動的に対抗する終末兵器である人類滅亡爆弾を配備する。両国の首脳は世界大戦を防ぐために協議するが、通信系統の故障によってアメリカの戦闘機が1機引き返さず、任務を遂行してしまう。

作戦室では、アメリカ大統領科学顧問兼兵器開発局長官でもあったストレンジラヴ博士(ピーター・セラーズ)が人類の存在について演説する一方で、ソ連軍による人類滅亡爆弾が起動し、地球上の全生物が10か月以内に絶滅することがわかり、一同は絶望する。

ストレンジラヴ博士は選抜された頭脳明晰な男性と性的魅力のある女性、そしてもちろん国家の指導部を地下の坑道に避難させ、「地下帝国」案を実行する。それと並行して、「ソ連も地下帝国を準備しているかもしれない。地下帝国競争でも我々は勝たねばならない」と叫ぶ。

狂気に憑りつかれたアメリカ軍部の暴走が描かれるGetty Images

ラストは第2次世界大戦が勃発した時期に流行した、アメリカのオールディーズナンバー『We’ll Meet Again(また会いましょう)』のメロディが流れる中、核爆発の映像が繰り返し流され、人類滅亡を暗示させるシーンで終わる。

地球の危機を回避しようとするサスペンスであり、核戦争を推進する軍人たちの姿をシニカルに描いたコメディでもある。現在、ウクライナで起きているさまざまな事象と重なる部分もあり、人類というものは核を持つと、ここまで狂うのかと思い知らされる作品である。

(文・寺島武志)

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