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夢のアイテムが現実に? 開発進行中のSF映画の科学技術(2)犯罪の未然防止は可能? 究極の安心の弊害とは

text by 司馬宙

未来はすでにここにある―。SF小説の大家ウィリアム・ギブソンは、かつて、そんな言葉を言い遺した。この言葉通り、SF映画が描いてきた未来像は、次々と現実化している。今回は、SF映画に登場するテクノロジーやガジェットから、特に印象的なものを5つ紹介しよう。(文・司馬宙)

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AIで実現可能? “究極の安心”を実現するテクノロジー

『マイノリティ・リポート』(2002)の犯罪予知システム

映画『マイノリティ・リポート』主演をつとめたトム・クルーズは本作で初めてスティーブン・スピルバーグとタッグを組んだ
映画『マイノリティ・リポート』の劇中カット。主演をつとめたトム・クルーズ【Getty Images】

製作国:アメリカ
上映時間:145分
原題:Minority Report
監督:スティーブン・スピルバーグ
原作:フィリップ・K・ディック
脚本:ジョン・コーエン、スコット・フランク
キャスト:トム・クルーズ、コリン・ファレル、サマンサ・モートン

【あらすじ】

 西暦2054年。ワシントンD.C.では、犯罪予知局に勤める予知能力者、通称プリコグ(precog)たちが犯人を事前に逮捕することで犯罪の発生件数が激減していた。そんなある日、犯罪予防局の主任刑事ジョン(トム・クルーズ)が殺人犯として予知される。同僚たちから追われる身となった彼は、真犯人を捕まえるべく1人奔走する。

【テクノロジーの概要】

 SF小説の巨匠フィリップ・K・ディックの作品を、映画界の巨匠であるスティーブン・スピルバーグが実写化した『マイノリティ・リポート』。制作にあたっては、16名のフューチャリスト(未来学者)からなるシンクタンクが、建築から交通機関に至る隅々までアドバイスを与えている。

 それは、ジョンたちが使うデバイスも例外ではない。例えば、作中でジョンたちが使うジェスチャー入力は、MITメディアラボのジョン・アンダーコフラー氏が提案したもので、制作当時開発中だったという。この技術は、2010年にMicrosoftが発表したゲームコントローラー「Kinect」をはじめ、さまざまな分野で実用化されている。

 そして、物語の鍵をにぎる「犯罪予知システム」も、すでに世界中で開発が進んでいる。

 特に有名なのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームが開発した犯罪予測AI「プレッドポル(PredPol)」だろう。このシステムは、AIが過去の犯罪発生データを学習し、犯罪発生率の高い地域を予測することでパトロールの効率的人員配置を行うという技術で、米国をはじめ世界中で導入が進み始めている。

 しかし、米ウェブメディア「ザ・マークアップ」が2023年10月に発表した報告によれば、「プレッドポル」の予測精度が実は0.5%未満であったことが明らかに。さらに、予測の現場が低所得層や人種的マイノリティの居住地区に偏っていたことから、偏見や差別を助長しているとの意見もささやかれている。

 あらゆる犯罪を未然に防ぐ犯罪予知システム。その開発は、果たして『マイノリティ・リポート』が描いた近未来に間に合うのだろうか。私たちに残されたリミットは、あと30年だ。

(文:司馬宙)

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