ホーム » 投稿 » 5選記事 » 日本映画 » 悲惨すぎる…実在した最悪の事故がモデルの邦画(4)600人以上が海にダイブ…未曾有の海難事故を基にした傑作

悲惨すぎる…実在した最悪の事故がモデルの邦画(4)600人以上が海にダイブ…未曾有の海難事故を基にした傑作

text by 編集部

交通事故に航空機事故、そして原発事故―。これまで数々の大惨事が日本列島を揺るがしてきた。一方で、歴史に残る事故は、たびたび映画の題材となり、観客にカタルシスをもたらしてきたのも紛れもない事実だ。今回は国内で起きた事故をテーマにした映画を5本セレクト。映画の見どころに加えて、史実も解説する。(文:編集部)

————————-

トルコと日本の知られざる絆を描いた異例の“日土合作”作品

『海難 1890』(2015)

忽那汐里
女優の忽那汐里はハルと春海の二役を演じているGetty Images

上映時間:132分
監督:田中光敏
脚本:小松江里子
出演:内藤聖陽、ケナン・エジェ、忽那汐里、永島敏行、竹中直人、夏川結衣

【作品内容】

 1890年9月。オスマン帝国の親善使節団ら600名の軍人を乗せたエルトゥールル号が明治天皇への謁見後、台風により和歌山県沖で座礁。水蒸気爆発により、618人もの乗組員が海へと投げ出された。ちょうど同じころ、爆発音を聞いた紀伊大島・樫野(現:和歌山県東牟婁郡串本町)の村民たちが岸壁に向かうと、多数のトルコ人の遺体が流れ着いていた。村の医師・田村元貞は助手のハルらとともに負傷者の手当てに奔走。多大な犠牲を出しながらも69人が生き残り、無事にトルコに帰還した。

 この事故から95年後。イラン・イラク戦争が激化する中、テヘランに215人の日本人が取り残される。日本大使館は早速トルコに救援を依頼。首相のトゥルグト・オザルは早速日本人救助のために救援機を派遣する。

【事件・作品概要】

 日本から西へおよそ8,700km離れたところにあるトルコは、世界有数の親日国として知られており、2013年に日本人女性がトルコで殺害された際には現地住民が被害者女性への哀悼の意を表したと言われている。

 なぜトルコは中東国にもかかわらずここまで親日感情を抱いているのか。その裏には、100年以上前に国内で起こったとある遭難事故が大きく関わっている。

 本作は、1890年に起きたエルトゥールル号遭難事件と、1985年に起きたイラン・イラク戦争での邦人救出劇を題材に日本とトルコの知られざる絆を描いたヒューマンドラマ。監督は『精霊流し』(2003)や『利休にたずねよ』(2013)で知られる田中光敏で、主人公の田村元貞を内野聖陽が演じる。

 本作を語る上で外せないのが制作の裏話だろう。本作の制作から遡ること10年前、当時串本町の町長だった田嶋勝正氏は、町長室の金庫からトルコ帝国政府の手紙を発見。トルコ政府が請求書を求めたものの、串本町側が断り、お金を被害者のために使ってほしいと政府に申し伝えていた事実が明らかになった。この手紙にいたく感動した田嶋氏は、大学時代の同窓生である田中に映画化を依頼。結果的に本作が制作されることになったという。

 なお、トルコとの合作にあたっては、田中、田嶋両名がトルコに渡り提案したものの、「合作映画(の監督)はトルコ人が務める」という法律のため一度却下される。しかし、その後、なんとトルコ側の観光大臣が法律を改正。トルコ側から700万ドルの製作費が供出され、ようやく製作にこぎつけたという。

 作品自体も、過剰にお涙頂戴にならず、史実に添った堅実な作りをしている点が魅力的。日本人であるならばぜひとも一度はご覧になっていただきたい作品になっている。

(文:編集部)

【関連記事】
悲惨すぎてエグい…実在した最悪の事故がモデルの邦画(1)
悲惨すぎてエグい…実在した最悪の事故がモデルの邦画(5)
悲惨すぎてエグい…実在した最悪の事故がモデルの邦画(全紹介)

error: Content is protected !!