残虐すぎる…実在のテロ事件・テロリストを描いた衝撃の映画(2)日本中が激震…全員実名で描く歴史的惨劇とは?
明治における伊藤博文暗殺事件、大正における原敬暗殺事件など、節目節目で日本の歴史を大きく変えてきたテロ事件の数々。その多くは、血塗られた黒歴史として疎まれる一方、被害者が権力者であることから「世直し」の名目で正当化されることもある。今回は、実在のテロ事件、テロリストをテーマにした映画を5本紹介する。(文・編集部)
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青年将校たちの悲しき顛末。激動の昭和をしめくくる記念碑的作品
『226』(1989)
上映時間:114分
監督:五社英雄
脚本:笠原和夫
出演:萩原健一、三浦友和、竹中直人、加藤昌也、鶴見辰吾、南果歩、名取裕子、本木雅弘、有森也実、隆大介、八千草薫、加藤武、川谷拓三、金子信雄、田村高廣、渡瀬恒彦
【作品内容】
昭和11年2月26日、陸軍皇道派の青年将校である野中、河野、磯部、栗原らは、天皇親政と君側の奸(天皇を囲む政治家たち)の打倒を掲げて決起した。世にいう二・二六事件である。
陸軍の兵士を手中におさめた彼らは、時の首相岡田啓介を皮切りに、蔵相・高橋是清、侍従長・鈴木貫太郎、内大臣・斎藤実らの家を次々と襲撃。陸軍高官の理解も得た彼らのクーデターは、一見成功したかに見えた。しかし、彼らの行動は昭和天皇を激怒させる。そして天皇自ら近衛師団を指揮し、断固鎮圧に取り掛かる…。
【注目ポイント】
宮内庁が編纂した昭和天皇の伝記『昭和天皇実録』には、昭和天皇が「積極的に自分の考を実行させた」とする2つの歴史的局面が記載されている。1つは太平洋戦争終戦時の「御聖断」で、2つめが二・二六事件だ。
二・二六事件は、昭和恐慌への政府の対応に業を煮やした陸軍の青年将校が「昭和維新」を掲げて起こしたクーデターで、高橋是清蔵相をはじめ4名の政治家が犠牲となった。
クーデター自体は天皇親政を目指す陸軍内の「皇道派」によるものだったが、最終的に「反乱軍」に認定され、多くの将校が死刑に処されている。
本作は、そんな二・二六事件を陸軍将校の目線から描いた作品だ。監督は『極道の妻たち』(1986)で知られる五社英雄で、脚本は『仁義なき戦い』シリーズの笠原和夫。キャストには萩原健一、三浦正和、本木雅弘、竹中直人ら、豪華キャスト陣が名を連ねている。
本作の見どころといえば、なんといっても美術の見事さを挙げなければならないだろう。暗く沈んだ冬の帝都にずらりと整列する軍人たち。そんな彼らを巧みな構図で切り取るのは、大映のベテランカメラマン森田富士郎だ。
本作は、事件から半世紀余りが経って関係者の実名公表が許されたタイミングで制作されており、登場人物は全員実名になっている。また、実際に事件に参加した河野壽の実兄である河野司が監修を担当していることから、実際の二・二六事件を忠実になぞっている点も魅力だろう。
なお、本作が公開された1989年は昭和天皇が崩御した年でもある。そのため、映画の宣伝も昭和天皇の国葬の終了を待って行われたという。そういった意味で本作は、激動の昭和を締めくくるにふさわしい作品といえるかもしれない。
(文:編集部)
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