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ラストの余韻がスゴい洋画、最高傑作は? 映画史に残る結末(2)画期的すぎる…観客おいてけぼりの幕引きとは?

text by シモ

映画作品は大抵、ハッピーエンドとバッドエンドに大別できる。上映後に爽快な気分になるものもあれば、暗い気持ちになるものもある。しかし、中にはどちらとも言えない作品も存在する。今回は、絶望と希望が合わさった不思議な結末を迎える映画を5本をセレクト。観終わった人の心に、大きな余韻をもたらす作品を5本紹介する。(文・編集部)

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何度観てもゾッとするラスト

『ミッドサマー』(2019)

映画『ミッドサマー』イラスト:naomi.k
映画ミッドサマーイラストnaomik

製作国:アメリカ、スウェーデン
上映時間:147分
監督:アリ・アスター
脚本:アリ・アスター
出演者:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ヴィルヘルム・ブロムグレン、ウィル・ポールター

【作品内容】

 妹が両親を道連れに自殺したことをきっかけに精神的に不安定な日々を送るダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学の研究をする恋人クリスチャン(ジャック・レイナー)とその友人たちと、スウェーデンへ旅行する。

 その目的は、友人のペレ(ウィルヘルム・ブロングレン)が案内してくれた夏至祭り。のどかな雰囲気と感じていていたそのコミュニティが、次第に異様なカルト集団だと気づきはじめて…。

【注目ポイント】

 2019年に公開されるや、批評家筋から賞賛を集め、「サイコロジカルホラー」(感情的および心理的状態に起因する恐怖を描く)の定番となった『ミッドサマー』の魅力は、アリ・アスター監督による卓抜な演出、暗がりではなく、真昼間の狂気を描く「明るいホラー」という画期的な手法など、多岐に渡るが、観る者に複雑な感情を抱かせるラストシーンもその1つだろう。

 舞台は、スウェーデンのヘルシングランドにある伝統的な村。同村で行われる9日間の夏至祭りに参加することになるダニーと、恋人のクリスチャン一行は、神秘的な衣装に身をまとう人々や宗教的な建物、絵画の数々に魅了されつつ、次第に、村のコミュニティで繰り広げられる異様な光景を次々と目撃し、浮かれた気分は恐怖に染め上げられることになる。

 一般的に映画では、主人公が観客の感情の受け皿になることが多い。村の異常さに気付いた後、「この場所にいたくない」と悲痛な表情で訴える主人公・ダニーの気持ちは、スクリーンを見つめる観客と軌を一にしている。

 しかし、物語が進むにつれて、ダニーの感情と観客の感情は乖離していく。恋人クリスチャンの裏切りをきっかけに、ダニーは吹っ切れていくのだ。

 映画終盤でクリスチャンは、捧げ者として火葬されることになるのだが、彼を犠牲者に選んだのは他ならぬ女王の座についたダニーである。

 はじめは、いまにも泣きそうな表情で、火あぶりに科せられる恋人の姿を見守っているダニー。その表情は画面と向き合う観客のものでもあるだろう。しかし、ダニーの表情は悲痛な顔から、徐々に笑顔へと変わっていく。

 ダニーはいわば村のルールに従ったわけで、クリスチャンを死に至らしめた原因のすべてを彼女に帰せるのは無理があるだろう。しかし、彼女の笑顔は自身の“やむを得ない選択”を全面的に肯定したかのように思える。言うまでもなく、その笑顔は、彼女がおぞましいコミュニティの一員となったことを雄弁に表現している。

 主人公に感情移入させるというセオリーを裏切り、観客を置いてけぼりにするラストは、本作の魅力を形成する大きな要因の1つだろう。

(文・シモ)

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