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最も面白い三谷幸喜の脚本ドラマは? TV史に残る名作(3)本当に素晴らしい…今こそ観るべき傑作とは?

text by 田中稲

2024秋-2025年春は三谷幸喜に要注目だ。彼のホームであり、30年という長い充電期間にあった劇団・東京サンシャインボーイズの復活、そして5年ぶりの映画『スオミの話をしよう』が絶賛公開中である。今回は、三谷幸喜脚本のドラマ作品の中から見直したい名作を5つセレクト。改めて魅力をかみしめたい。(文・田中稲)

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『合言葉は勇気』

香取慎吾

香取慎吾【Getty Images】

放送期間:2000年7月6日~9月14日
放送時間:木曜22:00~22:54
放送局:フジテレビ系
キャスト:役所広司、香取慎吾、鈴木京香

【作品内容】

 自然豊かな富増村。そこに「フナムシ開発」が産業廃棄物処理場の建設を決定する。悩む村役場の職員、大山忠志(香取慎吾)が、売れない役者、暁仁太郎(役所広司)と出会い、暁はニセの弁護士を演じ、村を守ることになる…。

【注目ポイント】

 コメディだが、テーマは、産業廃棄物の不法投棄という深刻な問題。敵対する弁護士、津川雅彦の憎々しさもまさに名演で、役所広司との対峙は、まさに演技合戦!

 もう一つ、このドラマで特筆すべきは、香取慎吾の名バイプレイヤーぶり。当時、SMAPとして大忙しだった彼。俳優としても主役、もしくはエキセントリックで個性的な役割が多かったが、俳優としては個性的な役割が多かったが、このドラマでは、フツーの青年を好演し、まさに新境地。この作品以降、三谷幸喜脚本作品で、「変わり者集団の中で振り回される常識人」の立ち位置を演じることが多く、『HR』(フジテレビ系、2002)然り、映画『THE有頂天ホテル』(2006)然り、本当に素晴らしい。

 このドラマで、三谷は役所広司演じる暁を「暴力的な寅さん」のイメージ、香取慎吾演じる大村を映画『ギルバート・グレイブ』(1993)のジョニー・デップのイメージで書いたという。さらにニセモノヒーローが活躍して平和をもたらす設定は『サボテン・ブラザース』(1986)。三谷はこの設定が大好きなのだそうで、のちに映画『ザ・マジックアワー』(2008)でも取り入れている
 
 裁判シーンは、ポール・ニューマンの映画『評決』(1982)をイメージ、ベースはNHKの人形劇『八犬伝』(1973)。なるほど、登場人物を見ると、『八犬伝』の登場人物の名が入っている! とにかく三谷幸喜の「大好きなエンタメ」のエキスが詰め込まれた作品なのだ。

 役所広司が2024年10月25日公開の映画『八犬伝』で滝沢馬琴を演じており、とてもいいタイミングだと思うので、本作をぜひ、ぜひ再放送してほしい。2000年放送時は決して注目度は高くなかったが、今の時代、改めて観るべき一作だと思う。

 そして現在のところ、民放の1時間枠の連続ドラマで三谷が脚本を書いたのは、この『合言葉は勇気』が最後。東京サンシャインボーイズ復活で多忙とは思うが、こちらもまた、ぜひ新作を見たい!

(文・田中稲)

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