最も面白い日本の音楽映画は? 魂が震える素晴らしき邦画(1)女子高生の青春がエモい…演奏場面がリアルな傑作
いつの時代も人々に感動を与えてきた音楽。ビートルズしかりローリング・ストーンズしかり、自身の思いを世界に表現し続けるアーティストや歌手たちは、存在自体が芸術といえるだろう。今回は、数ある音楽映画の中から、日本で製作された珠玉の作品をセレクト。観れば勇気がもらえること請け合いの5本を紹介しよう。(文・ZAKKY)
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ライブシーンから目が離せない!
「ブルーハーツ旋風」を巻き起こした青春エンターテインメント
『リンダ リンダ リンダ』(2005)
上映時間:114分
監督:山下敦弘
脚本:山下敦弘、 向井康介、 宮下和雅子
キャスト:ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織
【作品内容】
高校生活最後の文化祭に向け、練習をする5人組ガールズバンド。しかし、本番3日前にして、ギタリストとボーカリストが脱退するというハプニングが起こり、恵(香椎由宇)、響子(前田亜季)、望(関根史織)の3人が残される。そんな折、たまたまTHE BLUE HEARTSの名曲「リンダ リンダ」を耳にした恵たちは、これなら3人でも演奏できると意気揚々とバンドの再生を図る。そして3人は、通りすがりの留学生・ソン(ペ・ドゥナ)を勢いでボーカルに引き入れ、即席バンドを作ることになる。
【注目ポイント】
本作は、『リアリズムの宿』(2003年)で知られる山下敦弘が、高校生活最後の文化祭でTHE BLUE HEARTSのコピーバンドをすることになった少女たちの奮闘を描いた青春映画。主役のソンを『ほえる犬は噛まない』(2000年)のぺ・ドゥナが演じている。
本作が公開された2005年は、彼らの影響を受けたバンドが台頭してきた時代でもあり、トリビュートアルバムもメジャー・インディーズを問わず、何点かリリースされていた。そんなTHE BLUE HEARTSへの敬意が溢れた本作は、青春時代にTHE BLUE HEARTSを聴きまくっていた当時のアラサー世代の心を刺すとともに、THE BLUE HEARTSを聴いたことがない若者をも巻き込んで一大旋風を巻き起こした。
そんな本作の注目ポイントは、なんといっても終盤のライブシーンだろう。演技を超越した緊張感みなぎる様子や、メンバー同士で目配せをしながらリズムのタイミングを合わせる描写などはとにかくリアルで、生のライブを観ている感覚に見舞われる。
また、女子高生がTHE BLUE HEARTSのコピーバンドを組むという根本的な設定もなんとも斬新だ。青春映画にしては仄暗いトーンの本作だが、青春の明るさや爽やかさの裏にある仄暗さが、THE BLUE HEARTSのテイストと見事にマッチしている。
目の前のことにひたむきに取り組むソンたちの姿や、ライブをやりきったメンバーたちの間に芽生える理屈では語れない絆—。そんな少女たちの一瞬のきらめきを閉じ込めた本作は、音楽映画のみならず、青春映画の傑作と言うにふさわしいだろう。
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