世にも恐ろしい…実在する未解決事件をモデルにした邦画(4)犯人は女子高生? 犯罪史に残る怪事件を映画化
「未解決事件」。人を惹きつける言葉だ。一口に未解決と言っても、犯人が特定されていながらも不透明な部分を残すものや、犯人逮捕の糸口さえも掴めていないものまで、多種多様であり、その謎めいた性質からフィクションの題材になることも多い。今回は実在する「未解決事件」をテーマにした映画を5本紹介する。(文・編集部)
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「三億円事件」を大胆な解釈で描く野心作
『初恋』(2006)
上映時間:114分
監督:塙幸成
脚本:塙幸成、市川はるみ、鴨川哲郎
出演:宮﨑あおい、小出恵介、宮﨑将、藤村俊二
【作品内容】
実母に捨てられ、親戚の家で育てられた高校生のみすず(宮崎あおい)は、ある日、男から襲われたかけたことで、精神のバランスを崩してしまう。そんな中、長らく交流が途絶えていた兄・リョウ(宮﨑将)から渡されたマッチ箱に書かれていた新宿のジャズ喫茶に足を運ぶのだが…。
【注目ポイント】
日本犯罪史の中でも最も世に知られ、未解決事件の代名詞的な存在である「三億円事件」。
事件は1968年の冬に起きた。現金輸送車に詰まれた東芝府中工場の工員の冬のボーナス全額・約3億円が白バイ隊員に扮した謎の男に現金輸送車ごと奪われた。
3億円という金額は言うまでもなく、現在でも男性の平均生涯年収を上回る高額だが、物価高の違いを考慮に入れると、当時は約10億円の価値があった。それが一気に奪われたとあって、事件発覚時、日本社会が騒然としたことは言うまでもない。
そんな日本犯罪史上類を見ない怪事件を、「もしも犯人が女子高生だったら?」という大胆な仮定に基づいてフィクションに昇華した同名小説を映画化したのが本作だ。
主人公・みすずが、年の近い兄に連れられて以降、入り浸ることになる新宿のジャズ喫茶は、映画の舞台となっている1968年当時、不良少年、少女たちのたまり場だった。映画では、ジャズ喫茶でたむろするグループに属する1人の青年に心惹かれたみすずが、彼の手引きによって、白バイの警官に扮し、事件を起こす姿を描いている。
とはいえ、本作は、事件のディテールを事細かに再現するのではなく、天涯孤独だった少女が初めての恋に落ちるプロセスと政治運動に沸いた1968年の雰囲気を切り取ることに主眼が置かれている。甘酸っぱい初恋と謎に包まれた未解決事件。意外な取り合わせによって、観る人を惹きつける作品になっている。
本作以外にも、『女囚さそり』シリーズの伊藤俊也がメガホンをとった『ロストクライム-閃光-』(2010)、ドラマでは『悪魔のようなあいつ』(1975、TBS系)から、長瀬智也主演の『クロコーチ』(2013、TBS系)に至るまで「三億円事件」をテーマにした作品は枚挙にいとまがない。
ぜひ本作を皮切りに、他の作品も鑑賞してみてはいかがだろうか。
(文:編集部)
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