「見るたびにびっくりする」芸人・パフォーマー「ぼく脳」が愛する映画(1)スポーツ漫画の金字塔…奇跡の映画化
ぼく脳をご存じだろうか。「SNS界のマルジェラ」の異名を持ち、芸人、パフォーマー、アーティストとしてマルチに活躍する表現者だ。そこで今回は、PARCO MUSEUM TOKYOでの初の大規模個展「ぼく脳展」を終えたばかりのぼく脳さんにインタビュー。人生を変えた珠玉の映画5本について伺った。(文・司馬宙)
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【プロフィール】
1990年生まれ。某お笑い事務所に所属し芸人としてキャリアをスタートした後、漫画や音楽、ファッション分野で作品を制作。ツイッター(X)やインスタグラムなどで作品を発表し、日常に転がるアイテムを使った独創的なアートセンスが巷で話題を呼び、さまざまな企業やメディアから声がかかる。SNS上でカルト的な人気を誇るアーティストである。
バスケ好きにぶっ刺さる伝説の青春漫画のアニメ化
『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)
――最初にご紹介いただくのは、全世界で人気を博した『THE FIRST SLAM DUNK』です。
「ぼくは中学校からバスケ部に所属していて、学生時代はかなり入れ込んでいました。高校も強豪校で、流川楓みたいに図書館にこもっているのにめちゃくちゃ上手い先輩とかいましたね。
『SLAM DUNK』は、バスケを始めてから読みはじめたんですが、大好きな漫画だったので、映画館で上映してくれてとにかく嬉しかったです」
――ちなみに、ぼく脳さんは、YouTubeで、布団叩きで布団を叩きながらバスケをするという『布団バスケ』なる動画を公開されています。この動画では『SLUM DUNK』の主人公の桜木花道の格好をされていますね。
「ありましたね。これは、みんなぼくのドリブルの上手さに目が行ってしまって、伝えたいことがブレてしまったという(笑)」
――(笑)ちなみに、ぼく脳さんは、普段から髪を染められている印象ですが、桜木をイメージされているのでしょうか。
「いえ、そういうわけではないですね。坊主にして前髪だけ染めて残していた時期もあったんですが、ロシアの不良から影響を受けていました(笑)。でも、あの髪型も、周りから「桜木」って言われてましたね」
――黒髪か桜木か、という認識なんですね(笑)。ぼく脳さんが考える『SLUM DUNK』の魅力はどこでしょうか。
「キャラクターですね。まったく個性が違う5人が集まるみたいな、あの感じがすごく好きで。湘北高校とBADHOPにはすごく憧れましたね(笑)。ただ、桜木って地毛なんですよね。そこだけ昔から、なんで? って思ってました(笑)」
――今回の映画は、原作では桜木と反目することも多かった宮城リョータを掘り下げていますね。
「あれはズルいよね(笑)。主人公変えれば全員分できますから」
――(笑)確かに、全員分見たいですね。
「そうですね。ぼくはメガネ君(木暮公延)が見たいかなあ」
――今回の映画版では、宮城が海難事故で兄を失くしていたという知られざる過去が明かされましたが、ぼく脳さんはどのシーンに一番心打たれましたか?
「最後の方ですかね。宮城が山王工業高校との試合に勝って、母親と会話するシーンとか。普通にちゃんとした話だな、と(笑)」
――(笑)ちなみに、本作は山王工業高校との試合のシーン一番の見所だと思いますが、ここはいかがでしたか?
「うーん、ぼくとしてはあんまりでしたね。大体、試合中にめちゃくちゃ喋るじゃないですか(笑)。実際はあんなに喋らないので、『SLUM DUNK』を見るたびにびっくりします。
一方漫画の場合は、無言のシーンが数ページに渡って続いたりするので、映画以上に緊迫感が感じられる。それに、自分の呼吸と間で読めるので、個人的には映画より好きですね。
ただ、キュッ、キュッ、っていうドリブルの音はリアリティがあってよかったと思います」
――ちなみに、ぼく脳さんも、漫画やパフォーマンス、映像など、さまざまなメディアで横断的に活動されていますが、どういった点を意識して表現されていますか。
「ライブ感ですね。ぼくはお笑い芸人出身なんですが、どんなコンテンツもリアルには勝てないと考えています」
――確かに、ぼく脳さんの作品は、どの作品もリアルな手触りが感じられますね。
「そうかもしれないですね。ぼく自身、AIとかCGよりも、リアリティがあって、人の心を動かすものに惹かれています。
その点、やっぱり音楽には勝てないですね。例えば絵の場合は、泣いたり気分が高揚したりしづらいと思うんですが、音楽の場合は聞いている人の感情をそのまま引き出せるので、多少のコンプレックスはあります。
まあ、『THE FIRST SLAM DUNK』に関しては、原作が好きっていうだけで選んだので。『哀れなるものたち』の方が良かったかな(笑)」
(文・司馬宙)
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