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実話を基にした“泣ける邦画”の決定版は? 心震える感動作(4)笑えて泣ける…名言連発の大傑作は?

text by 阿部早苗

「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、現実に起きた出来事は、時に、精巧に作られたフィクションよりも深い感動をもたらし、観客の胸を打つ。今回は、実話を基にした心が温まる日本映画を5本セレクト。疲れた心にそっと寄り添ってくれる、珠玉の作品をセレクトした。(文・阿部早苗)

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実話ベースの泣ける映画の定番

『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)

高畑充希【Getty Images】
高畑充希Getty Images

上映時間:120分
監督:前田哲
脚本:橋本裕志
原作:渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」
出演者:大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、佐藤浩市(友情出演)、原田美枝子

【作品情報】

 医学生の田中(三浦春馬)は、ボランティアを通して難病の筋ジストロフィーを患う鹿野(大泉洋)と知り合う。手と首しか動かない鹿野は、ボランティアに24時間体制で支えられながら自立生活を送っていた。

【注目ポイント】

 全身の筋肉が衰えていく進行性筋ジストロフィーを患った鹿野靖明さんとボランティアとの交流を描いた書籍「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」を原作に、前田哲監督がメガホンを取った。

 超ワガママだけど、どこか憎めない愛されキャラの鹿野に扮したのは大泉洋。物語のキーパーソンとなる人物を高畑充希と三浦春馬が演じている。

 幼少期に筋ジストロフィーを発症した鹿野(大泉洋)は、20歳までしか生きられないと言われていた。そんな彼は、自ら募ったボランティアの支えによって34歳になってもまだ生きている。ボランティアの1人で医学生の田中(三浦春馬)との出会いをきっかけに田中の恋人・美咲(高畑充希)は鹿野と出会う。鹿野のペースに巻き込まれつつも、美咲はボランティアとして深く関わることになる。

 鹿野は手と首しか動かせないため、ボランティアが24時間体制で介助にあたるほかない。助けがないと生きていけない状況のなかでも、鹿野は夜中にバナナが食べたければ「買ってきて」と彼らに要求するなど自分の欲望に対して遠慮はしない。一見、ワガママにも感じるが、自分らしく正直に生きるのが鹿野のチャーミングなところ。前田哲監督をはじめとした制作陣は、作品のトーンを明るく保ち、鹿野とボランティアとの丁々発止の掛け合いには、思わずクスっとさせられる。

 田中と美咲との交流の中で鹿野の魅力は徐々に浮き彫りになっていく。美咲は田中に教育大生と嘘をついていることに後ろめたさを感じていたが、そんな彼女に鹿野は「嘘をホントにしちゃえばいい」とアドバイスする。

 また、医者になることを諦めようとする田中には「何が大事なんだ」と問う。一日一日を大事に生きることの大切さを説く鹿野の言葉は、自身が大病を患っていることもあり、嘘偽りのない説得力に満ちている。障害があっても決して欲望をあきらめない。そんな鹿野の姿は、生きることの素晴らしさに気付かせてくれる。

 現代人は、人に頼らずに生きることが正しいと思いがちだ。そのため生きづらさを感じてしまう傾向にある。故に、一日一日を命がけで生きる鹿野の「思い切って人の助けを借りる勇気も必要」という言葉はきっと心に響くだろう。

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