声の専門家が選ぶ「現役最強のイケボ俳優」は? 決定版(4)コメディと相性が抜群…プロが唸った美声の持ち主
男性は目で恋をし、女性は耳で恋をする―。英国の作家ウッドロー・ワイアットが遺した格言だ。この言葉の真偽はさておき、“いい声”が人の魅力を高めるのは確かなようだ。そこで今回は日本美声チューニング協会の三浦人美会長に「最高のイケボ俳優」の選出を依頼。そこから垣間見えたのは彼らの弛みない努力の跡だった。(取材・文:司馬宙)
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【日本美声チューニング協会三浦人美会長 プロフィール】
発声解剖学をベースにした声を出しやすい身体に整える美声チューニング®を提唱。20代はバンドのボーカルとして芸能事務所へ所属。年間300本のライブをこなし歌い続けた経験の中で発声・姿勢・呼吸等、身体のアプローチから声を変えていく手法を実践。バンド活動の終了後は、講師として稼働をスタート。人前で声を扱うことが多い企業代表や芸能事務所所属のアーティストレッスンまで延べ3,000 人以上の方を指導する。
西島秀俊
―――続いては、映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)をはじめ、数々の名画に出演されている西島秀俊さんです。
「西島さんの声は、中川さんの次に良かったですね。西島さんの声は、輪郭がはっきりしていて、がなり声でも潰れずに聞こえやすい。加えて帯域も広くて、身体もしっかりしているので、もう言うことなしですね」
―――声の輪郭を保つには、どういったことに気をつければいいのでしょうか。
「舌をしっかり動かして、子音をはっきり発音することですね。日本語は基本的に母音重視の言語で、子音をはっきり発音しなくてもなんとなく伝わってしまうので、あまり重視されないんですよ。
で、これに対照的なのが英語ですね。英語の場合は、子音重視の言語なので、舌の可動域が6倍くらい違うんです。なので、英語を話せる人は基本的に舌が鍛えられていて、誤嚥性肺炎も少ない」
―――つまり、西島さんも、声を出す時はかなり舌を動かしているという。
「憶測ですが、軟口蓋を思いっきり解放されているんだと思います。役者さんの場合は、顔も作らないといけないので相当大変だと思います。
特に、西島さんの場合、シリアスで寡黙な役が多いイメージですが、基本的に無表情だ大きい声って出ないんですよ。なので、『この顔で、ようこんな声出せるな』と毎度感心しています」
―――では、寡黙な役ほど、実は発声が難しいということでしょうか。
「そうですね。ただ、個人的には、西島さんは、地の声のバラエティがとても豊富な方だと思っています。なので、私としては、サスペンスやミステリーよりも、ハチャメチャなコメディで本領を発揮できる役者さんなのかなと」
―――確かに、ハチャメチャなコメディに出演する西島さんは一度見てみたいですね(笑)。ちなみに、顔をできるだけ動かさずに輪郭の声を出すには、どのようなトレーニングをすべきでしょうか。
「これはもう、表情訓練ですね。鏡の前に立って表情を作りながら、どこまで口を開けたら声が潰れないのか調整を繰り返します。
ちなみに、この訓練は、バンドのボーカルがMV撮影やライブの前によくやる訓練ですね。ただ、役者さんは仕事のたびにやらないといけないので、やっぱり大変だと思います」
(取材・文:司馬宙)
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