日本映画史上、最も切ないラストは? ほろ苦い結末の邦画(4)ファミレスで号泣…タイトル回収に鳥肌が立つ名作
ギリシャの哲学者アリストテレスは、魂を浄化する「カタルシス」の条件として、「怖れ」と「憐れみ」の感情が必要だと述べている。つまり、精神の浄化には、ハッピーな展開ではなく、バッドな展開を観ることが必須なのだ。そこで今回は、ほろ苦い結末を迎える日本映画5本をセレクト。心を浄化してくれる作品を紹介する。第4回。※この記事では物語の結末に触れています。(文・シモ(下嶋恵樹))
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『花束みたいな恋をした』(2021)
監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫
【作品内容】
終電を逃したことで偶然出会った大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。好きな映画や音楽が同じだった2人は、たちまち恋に落ちる。2人は、大学卒業後に同棲し、お互いに社会人になるが…。
【注目ポイント】
本作は、『最高の離婚』(2013)『カルテット』(2017)などのヒットドラマを数多く手がける恋愛ドラマの名手・坂元裕二が、男女の恋のうつろいを描いた作品。監督を『いま、会いにゆきます』(2004)の土井裕泰が務める。
共通の趣味を持ち、楽しいことばかりだった麦と絹。しかし、そんな2人も、就職して社会にもまれていく中で、次第に感情がすれ違っていく。
そして、互いにファミレスで別れ話を切り出すのだ。
自分たちの近くの席では、これから付き合うであろうカップルが、“恋の始まり”のような会話をしている。その光景を見て、2人は堰を切ったように号泣してしまうのである…。
お互いに会話を楽しんでいたあの頃にはもう戻れない-。そんな切なさとやるせなさが感じられるシーンだ。
そして、物語のラストへ。
2人は別れたにもかかわらず、お互いに相手を思いやっている。
「多摩川が氾濫した時に、彼女は何を思っていたんだろう」
「彼は家のトイレットペーパーを替えたかな」
2人のこのセリフは、タイトルのかけがえのない「花束みたいな恋」を如実に表しているように思えるのである。
ほろ苦くも、爽やかな感情を抱かせる作品だ。
(文・シモ(下嶋恵樹))
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【了】