日本映画史上、最も切ないラストは? ほろ苦い結末の邦画(5)屈強な侍が死んでいく…歴史に残る壮絶な最後は?
text by シモ
ギリシャの哲学者アリストテレスは、魂を浄化する「カタルシス」の条件として、「怖れ」と「憐れみ」の感情が必要だと述べている。つまり、精神の浄化には、ハッピーな展開ではなく、バッドな展開を観ることが必須なのだ。そこで今回は、ほろ苦い結末を迎える日本映画5本をセレクト。心を浄化してくれる作品を紹介する。第5回。(文・シモ(下嶋恵樹))
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『七人の侍』(1954)
監督:黒澤明
脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄
出演:三船敏郎、志村喬、津島恵子、木村功、加東大介、宮口精二、稲葉義男、千秋実、土屋嘉男、藤原釜足
【作品内容】
戦国時代のとある農村。この村では例年、野武士たちの襲撃に頭を悩ませていた。そんな中、村人たちは、野武士の襲撃を打開するために、用心棒を雇うことに決める。
候補に上がったのは、七人の侍たち。農民たちは彼らと手を組んで野武士と戦うことを決心する…。
【注目ポイント】
世界映画史に燦然と輝く名匠、黒澤明。そんな黒澤を「世界のクロサワ」として知らしめるきっかけとなったのが、この『七人の侍』だ。
物語は、前半で農民と個性的な七人の侍たちの穏やかな交流を描き、後半で一気に野武士たちとの緊迫感溢れる対決へと移行する。
特に、後半の戦闘シーンでは、村を守るために一致団結した農民と侍が、戦いの中で一人、また一人と斃(たお)れていく。いくら屈強な侍でも、あっさりと散ってしまう現実。そのあまりの無力感に、言いようのない空しさを覚える。
ラストシーンでは、戦いを終えて平穏な生活を取り戻した町民たちが、笛や太鼓を演奏しながら田植えの儀式を行う。彼らの傍らに佇むのは、戦死した4人の侍の墓だ。
農民たちの儀式を見ながら、侍のリーダー島田勘兵衛は力なくこうつぶやく。
「今度もまた負け戦だったな。勝ったのは百姓たちだ。私たちではない」
(文・シモ)
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