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“音楽が泣ける映画”、最高傑作は? 心震える名作(2)味わい深いラストが最高…心に沁みる映画の代名詞は?

text by シモ

音楽は映画に不可欠な要素のひとつである。優れた映画音楽は、観客を感動の世界へ誘うだけでなく、名場面を思い出させるよすがとして観客の心の中に永遠に残り続ける。今回は、そんな聴くだけで魂が揺さぶられる音楽が登場する映画5本をセレクト。その魅力を徹底解説する。第2回。(文・シモ(下嶋恵樹)

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『スモーク』(1995)

映画『スモーク』の現場での一幕。(左から)ウィリアム・ハート、ハーヴェイ・カイテル【Getty Images】
映画『スモーク』の現場での一幕。(左から)ウィリアム・ハート、ハーヴェイ・カイテル【Getty Images】

監督:ウェイン・ワン
脚本:ポール・オースター
出演者:ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、ハロルド・ペリノー・ジュニア、フォレスト・ウィテカー、ストッカード・チャニング

【作品内容】

 ニューヨーク州ブルックリン。この町の片隅でタバコ屋を営むオーギー・レン(ハーベイ・カイテル)は、常連客ととりとめもない会話を交わしながら、日々を過ごしていた。

 常連客の中には、オーギーの親友ポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)もいた。ポールは作家として活躍していたが、数年前に妻が事故で亡くなって以来、スランプに陥っていた。

 そんなある日。ポールが、考えごとをしながら歩いていたポールは、あわや自動車に轢かれそうになり、ラシード・コール(ハロルド・ペリノー)という少年に助けられる。

【注目ポイント】

 2024年4月に亡くなった、アメリカが誇る最高の作家の1人、ポール・オースターとタッグを組み、数々の名作を世に送り出してきた香港の映画監督ウェイン・ワン。そんな彼の最高傑作といわれる作品がこの『スモーク』だ。

 煙がかったニューヨークの風景に、ハーヴェイ・カイテルをはじめとする“激渋”の登場人物たち―。本作では、そんな苦み走った大人の雰囲気が画面全体から横溢している。

 そして、そんな本作に、より一層“スモーキー”な雰囲気を加えるのが、“酔いどれ詩人”トム・ウェイツの歌声だ。

 特徴的なしゃがれ声で、市井の人々の心の機微を歌いあげてきたトム。本作では、エンディング曲に1987年の彼の楽曲「Innocent When You Dream」(「Frank’s Wild Years」収録)が採用されている。

 物語の終盤。オーギーは、自身がタバコ屋を始めた頃のエピソードをポールに語る。

 ある日、ポルノ雑誌を万引きした黒人の少年を追っていたポールは、少年が落とした財布を拾う。そこには、少年のおばあさんと思しき人物の写真が入っていた。少年の境遇を慮ったポールは、それ以上追跡をやめる。

 それから数年後のクリスマスの夜。ふと少年の財布を取り出したポールは、住所を手掛かりに彼の自宅に行ってみる。すると、ドアを開け、盲目と思しきおばあさんが顔を出した。おばあさんは、少年をオーギーと勘違いし、次のように言い放った。

「きっと来てくれると思っていたよ、クリスマスの日におまえが私を忘れる訳がないもの!」

 そして、トムのソウルフルな歌声が流れ出し、エンドクレジットにオーギーの回想シーンがモノクロで重なる。

 本当に大切なものは煙のようなもの―。そんな本作のキャッチコピーが沁みる美しくも味わい深いラストシーンだ。

(文・シモ(下嶋恵樹))

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