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“音楽が泣ける映画”、最高傑作は? 心震える名作洋画(3)主演が撮影直後に急死…命を燃やした魂の作品

text by シモ

音楽は映画に不可欠な要素のひとつである。優れた映画音楽は、観客を感動の世界へ誘うだけでなく、名場面を思い出させるよすがとして観客の心の中に永遠に残り続ける。今回は、そんな聴くだけで魂が揺さぶられる音楽が登場する映画5本をセレクト。その魅力を徹底解説する。第3回。(文・シモ(下嶋恵樹)

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『イル・ポスティーノ』(1994)

映画『イル・ポスティーノ』
映画『イル・ポスティーノ』【Getty Images】

監督:マイケル・ラドフォード
脚本:マイケル・ラドフォード
出演者:マッシモ・トロイージ、フィリップ・ノワレ

【作品内容】

 南イタリア・ナポリ沖合の小さな島。この島に住む内気な青年マリオ(マッシモ・トロイージ)は、文字が読めることから郵便配達人に採用されることになった。

 彼の届け先は、チリから亡命してきた世界的な詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)だけだったが、ネルーダと交流するうちに、マリオは文学や芸術に目覚めはじめる。

【注目ポイント】

 祖国チリを追われた実在の詩人パブロ・ネルーダの自叙伝を基に制作された『イル・ポスティーノ』。本作は、1994年のアカデミー賞で5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、オリジナル音楽賞)にノミネートされ、結果的にルイス・バカロフの音楽にオスカーが贈られた。

 そんな珠玉の楽曲群の中でも、特に胸に沁みるのは、テーマ曲の「IL POSTINO」だろう。イタリア映画らしい優美ながら素朴なメロディは、決してドラマティックとは言い難い。しかし、物語に寄り添い、観る者の心に、確実に何かを残す。

 そんな本曲、まるでマリオ自身の人生のテーマであるかのごとく、物語の折々で用いられている。例えば、マリオが詩と出会い創作の喜びに満ち溢れたとき。そして、デモ集会に参加し、命を散らすとき―。人生の明暗を照らしだすこの曲は、まさにマリオの人生そのものなのだ。

 また、主演のマッシモは元々心臓が悪く、撮影中も日に日に衰弱。本作の撮了のわずか12時間後に41歳の若さで逝去している。マッシモがスタッフたちに遺した最後の言葉は、「今度は僕の最高のものをあげるからね」だったという。

 デモに命を懸けたマリオと、映画制作に命を燃やしたマッシモ。2人の人生が交錯するように思えるのは、筆者だけではないはずだ。

(文・シモ(下嶋恵樹))

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