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日本映画史上最高! 海外リメイク不可能なタイムスリップ映画(1)奇想天外で素晴らしい! 男尊女卑を問う傑作

text by 寺島武志

「タイムスリップ」を題材にした邦画の傾向は幅広く、コメディ作品や青春もの、歴史ものなど多岐に渡る。あの有名なタイムリープアニメも、80年代にはすでに実写映画化されていたのをご存じだろうか。今回は、江戸時代や戦国時代、バブル期など様々な時代を舞台にした、タイムスリップがテーマの日本映画を5本セレクトした。(文・寺島武志)

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江戸時代から侍が現代にタイムスリップ
男尊女卑の価値観にメスを入れる隠れた野心作

『ちょんまげぷりん』(2010)

錦戸亮2018年台湾にてGetty Images

上映時間:108分
製作国:日本
監督:中村義洋
脚本:中村義洋
キャスト:錦戸亮、ともさかりえ、鈴木福、井上順、忽那汐里、堀部圭亮、中村有志、佐藤仁美

【作品内容】

女手ひとつで一人息子の友也(鈴木福)を育てるひろ子。ある日、彼女のところにちょんまげを結った一人の男が現れる。男の名は木島安兵衛といい、180年前の江戸時代からタイムスリップしてきた本物の侍だ。

安兵衛は巣鴨の地蔵にお参りをした際、突然足元に泉が湧き出し、気づいたらタイムスリップしていたのだという。安兵衛が現れたスーパーの屋上には一体の地蔵が祭られているが、本人たちは気づいていない…。

【注目ポイント】

朝日新聞出身の作家・荒木源の小説『ふしぎの国の安兵衛』を改題し、映画化した本作。

映画初出演にして初主演を務めた関ジャニ∞の錦戸亮が、江戸時代の侍・木島安兵衛に扮し、現代にタイムスリップ、シングルマザーの遊佐ひろ子(ともさかりえ)との出会いを経てお菓子作りに目覚めていく様子を描いた人情コメディーだ。

ひろ子は安兵衛を俳優か変人だと思っていたが、行く当てもない安兵衛を、とりあえず従兄弟だということにして居候させる。安兵衛は「東京」と「江戸」の違いにカルチャーショックを受ける。

何より安兵衛が衝撃を受けたのは、女性が表立って働いているということ。江戸時代では考えられなかったことだ。ひろ子は東京と江戸の違いを指摘し、離婚した前夫は家事を全くしなかったから離婚したのだと語る。安兵衛は居候の恩返しにと、友也の世話と家事を引き受ける。

男女格差の改善が叫ばれる昨今、女性と男性の新しい関係を描き出そうとする試みはジャンルを問わず多い。しかし、男尊女卑の江戸時代からタイムスリップしてきた侍がシングルマザーと出会うことで価値観を改めていく…という奇想天外な発想に基づいて作られた作品は本作以外にないだろう。

安兵衛は家事をこなし、友也に礼儀や男らしさを教えるなど育児にも力を入れる。一方、家事から解放されたひろ子は以前にもまして仕事に打ち込む。友也が熱を出して寝込んだ時、安兵衛は心を込めて看病し、やがて友也は安兵衛になつくようになる。

タイムスリップの方法として捻りはないものの、現代と江戸時代を「お菓子」という共通項で結びつつ、現代にふさわしい男女の関係を描き出す本作は、心温まる感動作であると同時に、ユニークな形で社会問題にメスを入れる野心作でもあるのだ。

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