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邦画史上もっとも“意味深”なラストは? 余韻がスゴい結末(2)主人公死亡で脳みそが…未曽有の衝撃展開は?

text by シモ

あなたは映画に何を求めているだろうか? 突き詰めると心の変化を欲しているのではないだろうか。とりわけ、感情の整理がつかない、何とも曖昧な結末を迎える映画には、観る者の人生を変える力がある。そこで今回は、絶望と希望が合わさった不思議な結末の日本映画を、5本セレクトして紹介する。第2回。※この記事では物語の結末に触れています。(文・シモ)

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一度観たら絶対に忘れられない奇想天外なラスト

『ウルトラミラクルラブストーリー』(2009)

松山ケンイチ
松山ケンイチ【Getty Images】

監督:横浜聡子
脚本:横浜聡子
出演:松山ケンイチ、麻生久美子

【作品内容】

 青森の田舎町で母親と農業をしながら暮らす純粋な心を持った青年・水木陽人(松山ケンイチ)は、東京から来た保育士の町子(麻生久美子)に恋をする。

 ある日、畑で寝転ぶ彼の身体に起きた異変が、信じられない事態を巻き起こして…。

【注目ポイント】

 役者が口にするのは全編津軽弁。自由奔放なカメラワーク、常識にとらわれないシナリオ構成も相まって、類に見ないユニークな恋愛映画だ。浮世離れした生活を送る陽人は、常識の枠に収まらない個性的な人物。そんな彼が恋に落ちたのは、都会から来た保育士・町子。陽人にとって彼女はまるで太陽のような存在である。

 陽人があの手この手で町子の気を引こうとする姿は何ともけなげだ。彼は、ひょんなことから、農薬を大量に浴びれば普通の人と同じ振る舞いができるようになると知る。最初は半ば事故のような形で農薬を浴びることになった陽人だが、次第にみずから農薬を摂取するようになる。

 陽人の命懸けのアプローチは功を奏し、死んだ元カレを忘れられないでいる町子の心は、次第に陽人の方を向いていく。しかし、悲劇が訪れる。

 ある日、陽人は、山の中をはしゃいで走り回っていると、熊に間違えられ、猟銃で撃たれて呆気なく死んでしまうのだ。「死んだあとの脳みそは、まちこ先生にあげてくれ」という奇天烈なメモを残して…。

 町子は陽人の遺言を守り、彼の脳を瓶に入れて携帯するようになる。

 物語のラスト。町子は、保育園の子供たちと一緒に山を歩いている最中に、クマに出会う。彼女はとっさに、陽人の脳みそをクマの眼前にぶちまける…。

 映画は、陽人の脳みそを貪るクマを見下ろす町子の笑顔で終わるのだが、その笑顔は、陽人の命がほかの動物へ「バトンタッチ」された瞬間を見届けたことによる安堵を表しているのだろうか。

 とにもかくにも、一度観たら絶対に忘れられない奇想天外なラストシーンである。

(文・シモ(下嶋恵樹))

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【了】

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