「最初は腹立ったけど…」ニッポンの社長・辻皓平が愛する映画(1)観るたびに印象が変わる…魔法のような1本
各界で活躍する著名人に「人生に影響を与えた映画」をセレクトしてもらい、その魅力を語っていただくインタビュー企画。今回登場するのは、ニッポンの社長のネタ作りを担当し、独自なワールドで世間を席巻中の辻さん。そんな辻さんがネタを作るうえで影響されたコメディからホラーまで5本、鋭い切り口からお話を伺った。第1回。(取材・文/ZAKKY)
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【ニッポンの社長/辻皓平 プロフィール】
1986年生まれ。お笑いコンビ・ニッポンの社長(相方はケツ)のネタ作り担当。京都府京都市出身。趣味は音楽・映画鑑賞、野球、ギター。特技はボウリング。ピン芸人としての芸名は辻クラシック。
フィルムで織りなす愛に満ちた不朽の名作
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)
ーーージュゼッペ・トルナトーレ監督による、往年の名作ですね。
「もう何十回も見たんですけど、最終的には映画監督になる主人公・サルヴァトーレの少年~青年~中年時代とブロックが分かれている構成ですね。なので、自分が何歳の時に観るかによって、感情移入するポイントが違ってくるんです。今観ると、少年~青年期は、特にノスタルジーが詰まりまくっている映画やなと思いますね。
サルヴァトーレが片想いをある女性に青年期にするのですが、すごくまっすぐな純愛なんですね。でも、それを彼が将来なりたいと思っていた職業であり、憧れていた映画技師のお爺ちゃんが邪魔をして、うまくいかなかったといった話なんですけど。
最初観た時は、邪魔した爺さんのことを、ちょっと「なんでやねん!」と腹立ってしまっていたんですよ。
でもやっぱなんか何回も見ていくと、その恋は、確かにあのままうまくいくことはなかったんじゃないかなと思うんです。そう考えるとお爺ちゃんは、ええ仕事したなと。で、結局、サルヴァトーレは映画監督になるんですけど、その失恋の経験がなければ、絶対なってなかったと思うんですよ。
そもそも目指していた映画技師の仕事も限界があって、多分この先いらなくなるという時代背景なんです。 だから、実はその爺さんが、1番サルヴァトーレのことを考えてたんやろうなとも思えるんです。
そして、恋した女性は、サルヴァトーレの同級生のめっちゃ嫌なやつと結婚するんですよ。まあ、それも全部含めて、何が幸せな結末だったのか?ということを、観る度に考えさせられる作品ですね」
ーーー観る側の感情や年齢によって、全然違いますね。
「あと、その爺ちゃんが、『俺も答えがわからないことがあるんだ。教えてくれ』ってサイドストーリーも挟まれるんですよ。爺ちゃん曰く、ある兵士が、王女様に恋をして告白するんですけど、「私のために100日間、雨の日も風の日も外で待ってくれていたら、私はあなたを好きになります。あなたのものになります」といったことをその兵士に伝えるんです。
100日間、言われた場所で雨でも雪でも待ち続けるんですよ。で、99日待ち続けていたのに、その日に止めてしまったと。「それはなぜだったのか、教えてくれ、俺は考えてもわからないんだよ」といった話で。
ーーーまるで、禅問答みたいな。
「そのシーンも観ているこっちの考えが、段々と変わってくるんです。最初に観た時は、その兵士は答えが出るのが怖かったんかな。これでもし、恋が実らなかったら無駄になっちゃうじゃないかなと思ったんです。だったら、自分から去って、答えがわからないままの方が楽やったんかなと。
ーーーなるほど。興味深いです。
「でも、その兵士は何回もその場に待っていたら、王女様を優しい人じゃないと思っちゃったとも捉えられるんですね。むしろ彼は、99日も、こんなひどいことさせる王女様を好きじゃなくなったんかなと」
ーーーなるほど! 真逆の解釈もできると。
「はい。何回観ても僕にも答えがわからない、だからこそ特別な映画ですね」
(取材・文/ZAKKY)
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【了】