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名作ぞろいの平成ドラマ、最高傑作は? 本当に面白い作品(2)映像の魔術師…終末感がクセになる不朽の名作

「降る雪や 明治は遠くなりにけり」ー。俳人の中村草田男は、昭和6年にこの句を詠んだ。令和6年となる今年、改めて過去の時代を振り返るならば、さしずめ「ポケベルや 平成は遠くなりにけり」(字余り)といったところだろう。今回は、平成を代表するドラマ5本をセレクト。普遍的な面白さを誇るラインナップを紹介する。第二回。(文・司馬宙)

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平成を代表する“映像の魔術師”堤幸彦の誕生

『ケイゾク』(1999)

中谷美紀【Getty Images】
柴田純役の中谷美紀Getty Images

脚本:西荻弓絵、清水東
演出:堤幸彦、伊佐野英樹、金子文紀、今井夏木
出演:中谷美紀、渡部篤郎、鈴木紗理奈、徳井優、竜雷太

【作品内容】

 未解決事件の捜査を“継続”する捜査一課弐係。ある日、ここに、研修中のキャリア官僚・柴田純が配属される。

 配属早々、1年前に起きた「四日市市会社員殺人事件」の被害者から電話が来たという相談を受けた柴田は、公安のたたき上げ刑事・真山徹と捜査を開始するが…。

【注目ポイント】

 1990年代は、オカルトの10年だった。

 映画では『リング』(1998)をはじめとするJホラーが勃興。テレビでは、織田無道や冝保愛子といった霊能力者が席巻し、『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系)や『特命リサーチ200X』(日本テレビ系)、『木曜の怪談』(フジテレビ系)といったオカルト番組が多数制作された。

 こういった流れに拍車をかけたのが、ノストラダムスの大予言だろう。1999年7の月、空から恐怖の大王が降りてくる―。そんな書き出しから始まるこの予言は、世間を恐怖に陥れた。人類は2000年を迎えられないのではないかという不安が、冗談ではなく日本中に蔓延していたのだ。

 そんな世紀末に産声をあげたのが、『ケイゾク』だ。

 演出は、『金田一少年の事件簿』(1995、日本テレビ系)で注目を集めた“映像の魔術師”堤幸彦。主人公の柴田純を中谷美紀、真山徹を渡部篤郎が演じている。

 若手の女性刑事とベテランの男性刑事がタッグを組み、難事件に挑むという本作のプロットは、よくある「刑事のバディもの」で、物語自体もさして特別なものではない。本作の注目ポイントは、むしろ、堤による映像の演出にある。

 青を基調とした無機質な映像に、広角レンズを使った歪んだ映像―。本作では、そんなホラー映画まがいのトリッキーな映像に、思わずニヤリとしてしまう小ネタがたっぷりと散りばめられる。堤流のシュールな世界観が、視聴者の心をつかんだのだ。

 中でも特筆すべきは、本作のオープニング映像だろう。中谷美紀が歌う「クロニック・ラヴ」(作詞・作曲はなんとあの坂本龍一が担当している)に合わせて、暗いトーンの都市のスナップショットや事件の現場写真が超高速で流れるという演出は、令和の今見ても全く古びていない。

 なお、このOPは、1995年に制作された『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京)の影響を受けたと言われている。そういった意味で本作はアニメをはじめとするサブカル文化の流れを汲んだ作品だったといえるかもしれない。

(文・司馬宙)

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【了】

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