改変が天才的で原作超え…最も成功した「長編小説の映画化」(1)再現度が完璧…巧みなストーリーに唸る傑作は?
長編小説はしばしば映画の原作になるが、長大な物語をおよそ2時間の尺に収めるためには、知恵がいる。映画化にあたり、成功の鍵を握るのは、そうした工夫にあると言っても過言ではないだろう。そこで今回は、長編小説の改変に成功した実写化映画を5本セレクトして紹介する。第一回。(文・ばやし)
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予想を裏切るストーリー構成の妙
『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007年)
原作:伊坂幸太郎
監督:中村義洋
脚本:中村義洋、鈴木謙一
キャスト:濱田岳、瑛太、関めぐみ
【作品内容】
大学入学のために仙台のアパートに引っ越してきた椎名(濱田岳)は、隣人の河崎(瑛太)から、同じアパートで暮らす引きこもりの留学生に広辞苑を贈るため、書店を襲撃する奇妙な計画を持ちかけられる。
【注目ポイント】
伊坂幸太郎作品の映画化と言えば、かつて本屋大賞も受賞した『ゴールデンスランバー』(2010)が有名だが、監督を務めた中村義洋が同作品を映像化するよりも前に制作したのが、2007年に公開された『アヒルと鴨のコインロッカー』だ。
もとより、映像化するのは難しいのではないかと思われていた本作品を実写映画化できたのは、巧みなストーリー構成によるものだった。
原作の冒頭にも登場する「本屋を襲って、広辞苑を奪うんだ」という突飛なフレーズに興味を惹かれる物語は、大学生の椎名が近所に住む謎の男・河崎から本屋を襲おうと誘われる「現代」と、ペット殺し事件にまつわる出来事が語られる「過去」を交互に描いたミステリー作品。
しかし、映画では各章を組み替えながら「過去」のパートをモノクロの回想シーンで表現することで、ともすれば理解が難しくなってしまう「現代」と「過去」の相違点を、分かりやすく描写することに成功していた。
シャローンとマーロンの話や「トマト」と発音するときのアクセントなど、原作の雰囲気を損なわない重要なエピソードもしっかりとピックしており、伊坂幸太郎作品の世界観を十二分に再現した実写映画化だった。
(文・ばやし)
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【了】