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巨匠絶賛…和製SFの名作は? 世界で高評価なSF日本映画(3)革命級の映像で賞賛の嵐…史上最高の傑作は?

text by ニャンコ

日本では、潤沢ではない製作費により、SF映画がチープなものになってしまう。それと同時に、海外でも上映される作品や賞を取っているものなど、角度のついた設定のSF映画も数多くある。今回は、クエンティン・タランティーノやスティーブン・スピルバーグなど、名だたる巨匠が絶賛している、日本のSF映画を5本紹介する。(文・ニャンコ)

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メガホンをとったのは手塚治虫の息子。坂口安吾の代表作を斬新な演出で表現

『白痴』(1999)

浅野忠信
浅野忠信Getty images

上映時間:146分
監督:手塚眞
脚本:手塚眞
出演者:浅野忠信、草刈正雄、橋本麗香、甲田益也子、岡田眞澄、藤村俊二、江波杏子、あんじ、小野みゆき、原田芳雄、新井紀人、川村かおり、泉谷しげる、筒井康隆、伊武雅刀

【作品内容】

延々と続く戦争により人々の生活が荒み、どこか終末的な空気の漂う日本。映画制作を志しながらテレビ局のADとして働く伊沢(浅野忠信)は、戦意高揚番組と安直で低俗な歌謡番組ばかりの仕事に幻滅していた。

なかでもカリスマ的アイドルの銀河の傍若無人さと、粗暴なディレクターの落合の理不尽な仕打ちには、心身をすり減らすばかり。そんなある日、隣に住む木枯の妻で白痴の女性サヨ(甲田益也子)が伊沢の部屋に忍び込んでくる。そこから2人の奇妙な共同生活が始まる。

本作は、無頼派の作家・坂口安吾の「堕落論」に並ぶ代表作「白痴」を、手塚治虫の長男・手塚眞がメガホンを取り、映画化した文芸大作。

戦時中の秘められた男女の共同生活と逃避行を描いた原作を、ビジュアリストと呼ばれ監督・手塚眞のイマジネーションにあふれた独自の発想と演出で大胆に映像化した。

【注目ポイント】

本作は、戦時下の日本を舞台に、社会の荒廃と人間関係の複雑さを描いた映画である。メガホンをとったのは、国民的漫画家・手塚治虫の長男である手塚眞。斬新な演出とビジュアル表現で、坂口安吾の文学を大胆に映像化し、大成功を収めた作品だ。

本作は、ヴェネチア国際映画祭でデジタルアワードを受賞。ヴィジュアル面以外にも、特にキャラクターたちの深い心理描写と社会への視点にもユーモアと鋭さがあり、ヴェネチア以外にも、釜山国際映画祭、シンガポール国際映画祭など、歴史のある映画祭でも上映され、目利きの心を掴むことに成功した。

日本独特の美学とメッセージ性が国際的に認められ、ヨーロッパの映画祭では特にその独自のアプローチが高く評価されている。また、アジア圏にもファンは多く、香港の巨匠ウォン・カーウァイも本作を賞賛する言葉を残している。

東西の映画関係者からの高い評価は、『白痴』の普遍性と映画としての革新性を象徴している。2021年には公開20周年を祝して、デジタルリマスター版が公開&ブルーレイ発売。ぜひより一層クリアになった映像で、日本SF史上最高傑作の1本を堪能してほしい。

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