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衝撃の「過大評価」…? 世界から批判を浴びたアカデミー賞作品(3)極悪な犯罪男に踏みにじられた名作とは?

映画界最大のお祭り・アカデミー賞。オスカーを獲った作品は、後世まで語り継がれる名作として大きな名誉を得ることになる。しかし1929年から続く長い歴史のなかで「なんでこの作品が?」と議論を呼ぶ結果を生むことも。今回は歴代アカデミー賞”作品賞”受賞作から「過大評価」といわれた作品を5つご紹介する。(文・ジュウ・ショ)

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『プライベート・ライアン』の方が優れているとの声も…。
敏腕プロデューサーの”ロビー活動”疑惑も

『恋に落ちたシェイクスピア』(1998)

グウィネス・パルトロー
グウィネスパルトローGetty Images

上映時間:137分
原題:Shakespeare in Love
製作国:アメリカ
監督:ジョン・マッデン
脚本:トム・ストッパード、マーク・ノーマン
キャスト:グウィネス・パルトロー、ジョセフ・ファインズ、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ラッシュ、コリン・ファース

【作品内容】

舞台はペストが蔓延し、劇場が閉鎖されるロンドン。主人公はあのウィリアム・シェイクスピアで、『ロミオとジュリエット』の上演を準備している。一方、ヴァイオラは貴族との望まない結婚を避けるため、男装して劇団に参加し、ロミオ役を演じることになる。

シェイクスピアとヴァイオラは恋に落ちるも、ヴァイオラはウェセックス卿と結婚するしか手段がなく、アメリカに渡ることに。シェイクスピアは彼女を思いながら、新作喜劇を創作する。

【注目ポイント】

今作は過去アカデミー賞受賞作のなかでも「過大評価じゃない?」と言われがちな作品の筆頭だ。というのも、この年は名作『プライベート・ライアン』が上映された年だからである。

両作品とも素晴らしい出来栄えだが、20年以上経った今から振り返ると『プライベート・ライアン』のほうが圧倒的に知名度が高い。それだけ評価する人が多いのは間違いないだろう。もちろん、当時から「傑作」と称える声は多かった。とりわけ、冒頭のノルマンディー上陸作戦をリアルに描いた場面は「映画史に残る20分」として語り草だ。

そんな名作『プライベートライアン』を差し置いて、なぜ『恋に落ちたシェイクスピア』はアカデミー賞を獲れたのか。その背景にはプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインがいる。周知のとおり、長年にも渡って女優・女性スタッフへの性暴力・セクハラを繰り返してきた、れっきとした犯罪者である。

彼は敏腕過ぎて合計で300以上のオスカーを獲得したといわれる。 そもそもアカデミー賞を決めるのは投票権を持つアカデミー会員。数千人の会員の投票数によって決まる。

ハーベイ・ワインスタインはいわゆる「ロビー活動」が人並外れて上手いことで有名。会員に電話をかけたり、会員が休暇を過ごしがちな場所で試写会を開いたりすることで票を集めたりすることで、多数のアカデミー賞の獲得につなげることに成功した。ちなみに、アカデミー側は、不正ギリギリを攻めるワインスタイン対策に努め、たびたびルールを再設定してきたという。

2017年に彼は性暴力や強姦罪で逮捕、その後に禁錮刑を受けたことが大々的に報じられたが、それまではオスカー請負人だったわけだ。こうした込み入った事情から、今でも『恋に落ちたシェイクスピア』が獲るべきではなかった、という声が続出。

なにより、ワインスタインからの被害を訴えた女性の一人に、本作でアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得したグウィネス・パルトローが含まれているのだから、フラットな態度で本作を見返すことは難しくなっている。

言うまでもなく、ワインスタインを告発に踏み切ったグウィネス・パルトローの勇気は素晴らしい。また、本作で彼女が披露した芝居は今後も決して色あせることはないだろう。だからこそ、映画をダシにして、私欲を満たしたワインスタインへの怒りがふつふつとこみ上げてくる。その点、鑑賞するたびに複雑な気持ちに駆られる一作だ。

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