2. 「SNS」を巧みに取り入れた脚本
現代人の生活の中心と言っても過言ではないSNSは、最近のドラマや映画でも度々描かれる。
本作では過去に真希子が使用していたmixiが登場している。ピンとこない若者も多いと思うが、2000年中盤に流行っていたコミュニティサイトだ。SNSを通して時代背景を感じられるのも本作の興味深いところ。
13年前の火事が起こる以前、真希子はシングルマザーで家族3人、ボロアパートに住んでいた。
そんな中、皐月と出会い、裕福な家庭に憧れを抱くようになった真希子は、彼女の私物を盗み、それをあたかも自分の物のようにmixiにアップしていく。そうしてネット上で評価され、自己顕示欲を満たしていった。
そんなSNSに囚われている真希子と対照的なのは杏子だ。
真希子の長男・希一から引きこもりになったきっかけを聞いた杏子は、火事の後、小学校の同級生から無視されるようになったことを打ち明ける。
そこで「私の人生チラ見しただけの奴が言ったことなんて気にすることない」と伝え、希一は少しずつ前に進んでいくようになる。これは現代のネット社会を生きる我々にも心に響くメッセージだ。
私たちもSNSを通して顔も知らない誰かからの評価を欲しがり、同時に評価を恐れている。真希子の行動は決して他人事ではない。本作は、SNSに囚われた人物の内面を深く描き込むことで、ネット時代にふさわしいキャラクター像、物語を見事に描き出している。