3. 女性の強さと醜さを描く鋭い演出
さらに、本作の特徴として挙げられるのは、主人公の杏子をはじめ、登場している女性がみな一様に強いという点だろう。
キャスティングも素晴らしい。鈴木京香は長いキャリアで培ったどっしりとした存在感があり、真希子を演じるのは彼女しかあり得ないだろうと思わせる。真希子は小姑のネチネチしたいびりにも決して屈しない、強い女性だ。
皐月を演じた吉瀬美智子は、他作品では強い女性を演じる機会が多い。しかし、今回彼女が演じた皐月は、おしとやかで男性の一歩後ろを歩くタイプだ。
劇中に登場する女性がことごとく強いキャラクターである中、当初、皐月は弱いタイプに映る。しかし、物語が進んでいくにつれ、観る者は皐月の内に秘めた強さに引き込まれていき、この配役がピッタリだったのだと得心する。
一方、強さが際立つ女性キャラクターとは対照的に、男性キャラクターは頼りない人ばかり。杏子の父親で、真希子の現夫である治は優柔不断の性格で、観ていて度々イライラさせられる。真希子の息子2人も頼りなく、女性陣の強さを引き立たせることに一役買っている。
さらに、重要なのは、本作では女性の強さと同時に、ある種の”醜さ”もしっかりと描いているという点だろう。
元々貧しい生活を送っていた真希子は、当時の御手洗家に憧れを抱き、徐々に服装や仕草を真似ていく。当時小学生だった杏子が違和感を持つほどの気味悪さだ。
皐月の真似をして、私物も盗んでいるにもかかわらず、皐月を憎んでいる。本作は、男性にはあまり共感を得られないかもしれないが、女性独特の嫌な部分が巧みに表現されているのだ。