4. 犯人が分かっているのに謎解きできる
本作はしょっぱなから「容疑者・真希子」として物語が進んでいく。彼女が犯人であることが前提で進むにもかかわらず、なぜか飽きずに楽しめる。
その理由の一つは、本当に真希子が犯人なのか、確信させない演出にある。13年前、燃えさかる家を前に笑っていた真希子を見た杏子は、絶対に彼女が犯人だと思っているのに、証拠が何一つとして存在してない。
そこで杏子は、家政婦として中に入り込み、真希子がいない間に家の中を物色するのは前述のとおりだ。協力者である友人・クレア(北乃きい)は、自宅のパソコンで証拠を集め、分析するのだが、スパイ映画さながらの描写に胸が躍る。
物語が進んでいくにつれて証拠も見つかっていき、真相に近づいていくが、追い詰められても真希子は堂々としている。それはなぜなのか。杏子と一緒に謎解きしていく我々観客も、自分の解釈が正しいのか、疑心暗鬼になっていく。
さらに、ミステリー作品である本作の特色として、「すでに死んでいる」といった設定のキャラクターがほとんど出てこないという点も挙げられるだろう。犯人にされた皐月と真犯人と目される真希子、いわゆる被害者と加害者の直接対決はあるのかと、観る者は最後まで目が離せない。