異星人襲来で時間の概念が覆される

『メッセージ』(2016)

エイミー・アダムス
エイミー・アダムス【Getty Images】

製作国:アメリカ
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:エリック・ハイセラー
キャスト:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ

【作品内容】

突如、世界各地に現れた12の巨大な宇宙船。アメリカ軍から協力を要請された言語学者のルイーズ・バンクスは、彼らが地球に飛来した目的を解き明かすため、生物学者イアン・ドネリーの協力の元、7本の足を持つ異星人とのコンタクトを試みる。

彼らの言語を解読していく中、ルイーズは時間をタイムループするような不思議な感覚を覚える。
異星人が地球に訪れた本当の理由が解き明かされた時、世界は未曾有の危機を迎える…。

【注目ポイント】

本作の監督を務めたのは、リブート版『DUNE/デューン 砂の惑星』を手がけたドゥニ・ヴィルヌーヴ。黒く7本の足を持つ謎のエイリアンとのコンタクトを試みるSF映画である。

「過去から未来」という、人間が一般的に考える、直線的な時間の流れとは異なった「円」のような時間軸を生きるエイリアンとのコミュニケーションを試みる言語学者ルイーズ・バンクスが主役だ。

映画内では、彼女の地球外生命体とのコミュニケーション体験を通して「人間の自由意志」や、「大切な“人”や“時間”の喪失」、「過去、現在、未来」に関する非常に興味深い考察を展開する。

映画のラストでは、度々ルイーズの身に起きる、過去の映像と思われていたフラッシュバックの内容が、実は彼女の未来の記憶であることが明らかとなる。

未来の記憶に登場する少女の正体は、数学者イアンとの間に産まれたルイーズの娘・ハンナである。ハンナは、幼いながら、残念なことにルイーズよりも先にこの世を去る。また、数学者イアンも最終的にルイーズのもとを去る。

そんな悲しい結末が訪れることを知りながら、それでもなおルイーズはその未来を受け入れ、エイリアンが見せてくれた未来に踏み出すことを選ぶ。

彼女の決断は観客の共感を呼ばないかもしれない。しかし、もし自分が同じ立場に立ったら彼女と同じ決断をするかもしれない…と思わせる説得力がある。一度観ただけでは全貌が捉えがたい。だからこそ、見終わった後の余韻が半端ない、SF映画の秀作である。

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