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「嗚咽感が半端なくて…笑」漫画家・丘上あいが選ぶ”心の映画”(1)。「反則ですよ、あんなの!」”鬱映画”の傑作は?

text by ZAKKY
中央ビョーク中央左カトリーヌドヌーヴGetty Images

各界で活躍する著名人に「人生に影響を与えた映画」をセレクトしてもらい、その魅力を語ってもらうインタビュー企画。今回登場するのは、漫画家の丘上あいさん。2017年より講談社と『まんが王国』との共同プロジェクトとして連載された『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』はテレビドラマ化を果たすなど話題に。そんな数々のヒット作を生み出してきた一児の母でもある彼女に、その半生における様々なポイントで心を焦がされた映画を5本紹介してもらった。今回は第1回。(文・ZAKKY)

●「視力を失っていくセルマが母の姿に重なる」心に突き刺さる“鬱映画”の傑作

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)


出典:Amazon

上映時間:140分
製作国:デンマーク
監督:ラース・フォン・トリアー
脚本:ラース・フォン・トリアー
キャスト:ビョーク, カトリーヌ・ドヌーヴ, デヴィッド・モース, ピーター・ストーメア, ジョエル・グレイ

―――まずは、世界的な女性シンガーであるビョークが主演の名作です。

「鑑賞する前から鬱っぽい内容の映画だと聞いていて興味がありました。基本的にダークな映画が好きなんですよね。独身時代、家族で観に行ったんです。そしたら、鬱すぎて、後半は嗚咽感が半端なくて(笑)。でも、結婚して息子を産んでからもう一度鑑賞すれば、何か違う感覚が得られるかなと思って観たら、さらに落ち込んでしまって(笑)」

―――アハハ!でも、作品には魅了されたわけですか。

「先天性の病気で視力を失ってゆく主人公・セルマが、子供にその症状が遺伝するということを知ってから、息子の手術費を一生懸命働いて貯金するわけです。でも、ある騒動で殺人犯になってしまうんですね。その後、紆余曲折あって結局、息子のために死刑になるという話なんですが…」

―――重い物語ですよね…。

「はい。で、どこに思い入れがあるかと言えば、再見後に、自分がセルマと同じ立場だったら、きっと彼女と同じ行動を取るだろうなと思えたことなんです。人の親になる前に観るのと後に観るのとで、こんなに印象が違うのかと思わせてくれた映画ですね」

―――なるほど。

「実は私の母親は、私が幼いころに事故に遭って以来、身体に障がいを患うことになったんです。元々、健常者だった母の世界が変わってゆく様を、私は間近で見ているんですね。だから、視力を徐々に失っていくセルマが母の姿に重なってしまい…。しかも、セルマの症状は息子にも遺伝するなんて、自分に置き換えたら、とても想像できなくて…」

―――ああ…。

「また、セルマは死刑を宣告された後も、歌いながら踊るんですよ。これから死に向かうのに、楽しそうなんです。そんな救いのない物語なのですが、息子だけは救うという描写が、今の私には一番心に刺さるんです」

―――なんだか、最初に笑っていた自分が恥ずかしいです…。

「いえいえ(笑)。あと、ビョークの演技は、女優としても素晴らしいと思います。主題歌もサントラも手がけていますし、クリエイターとして反則ですよ、あんなの(笑)」

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