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芸能人最高の映画監督は誰…? タレントがメガホンをとった映画ベスト5選。ポスト北野武として期待が集まる5つの才能とは?

text by 編集部

自身の容姿、トーク、演技力を駆使してスターダムに駆け上がらんとする芸能人はすべからくハングリーだ。今回は芸能人が監督した映画の中でも、観るべきポイントを豊富に含んだ良作を厳選。映画監督として成功を収めるためには人気のみならず人間性や知性が問われる。すでに巨匠としての地位を確立している北野武以外の5つの才能をご紹介する。

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タイトルとは裏腹に有能すぎる…。
確かな映画的教養が垣間見える意欲作

竹中直人『無能の人』(1991年)


出典:Amazon

監督:竹中直人
脚本:丸内敏治
原作:つげ義春
出演:竹中直人、風吹ジュン、三東康太郎、山口美也子、マルセ太郎、神戸浩、神代辰巳、大杉漣、いとうせいこう、草薙幸二郎、須賀不二男、久我美子、野村昭子、船場牡丹、原田芳雄、三浦友和

【作品内容】

無能の人、助川助三(竹中直人)。妻子あり。助川はかつて人気漫画家だったが、漫画が売れなくなってしまい、家族を養うために職を転々とする。最終的に行き着いたのは、多摩川の河原で石を売ることだった。

現代社会から取り残されてしまった家族が再出発する–。竹中直人初監督作品。

【注目ポイント】

俳優の竹中直人
監督を務めた竹中直人Getty Images

俳優としての竹中直人は、映画『Shall We ダンス?』の周防正行監督、映画『ヌードの夜』の石井隆監督を筆頭に、数々の名匠の作品で唯一無二の存在感を発揮。抜群の演技センスもさることながら、小津安二郎、成瀬巳喜男といった日本映画の巨匠に向けた敬愛の念を公言しており、豊かな映画史的教養の持ち主でもある。

本作は、漫画家・つげ義春の世界観に魅了された彼の初監督作品。ちなみに、つげ義春作品は映画監督から人気であり、1998年には鬼才・ 石井輝男が浅野忠信主演で『ねじ式』を、2004年には山下敦弘が『リアリズムの宿』を発表している。

竹中が映画を撮る時は「好き」という感情を大切にしているという。

竹中が好きで撮っていること、”つげ義春への愛”は、画面を通じて我々にも伝わってくる。カメラワークや人物の動きが静かなトーンで統一されているのは、漫画のように“静”を意識していることと、つげ義春のシュールな世界観を忠実に再現しているためだ。また、抑制された感情表現は、竹中が愛する小津安二郎のタッチでもある。

原作のある作品は、どうしても様々な人の思いや価値観があるため、辛辣な評価を受けてしまうことも多い。しかし竹中は、原作漫画への深い愛と理解をベースに、初監督作品とは思えない的確な演出で原作のエッセンスを見事にすくい取ることで、元の漫画を愛する人をも唸らせる作品をものにしてみせた。

竹中演じる助川は無能な男ではあるが、家族から見放されているわけではないところに救いを感じる。風吹ジュン演じる妻は助川に辛辣な言葉を投げかけるが、それでもそこに愛を感じてしまうのは、彼女も家族を支えるためにパートに出ており、心の奥では夫の描く漫画を信じていることがしっかりと伝わるからだ。

竹中が映画監督に初挑戦した本作は、世界三大映画祭の一つであるヴェネチア国際映画祭に出品され、見事、国際批評家連盟賞を獲得。北野武と並ぶ、優れた異業種監督の筆頭株と呼んでも過言ではないだろう。

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