「映画も豆腐屋も絶滅危惧種みたいなもの」藤竜也×麻生久美子共演。映画『高野豆腐店の春』三原光尋監督、独占インタビュー
昔ながらの小さな豆腐店で、すれ違う父と娘の心温まる愛情を描く、藤竜也主演、麻生久美子共演の映画『高野豆腐店の春』が8月18日(金)より公開される。今回は、本作のメガホンをとった三原光尋監督のインタビューをお届け。多様な要素が詰まった本作の制作秘話、映画に込めた思いなど、たっぷりとお話を伺った。(取材・文:山田剛志)
「藤さんに甘えて映画を作るのだけはやめたかった」
15年ぶりに藤竜也と再タッグを組むことになった経緯
―――三原監督が藤竜也さんと映画をお撮りになるのは、今回で3作目。前作『しあわせのかおり』から15年ぶりとなりました。プレス資料によるとコロナ直前の2019年に小林聖太郎監督を介して、藤さんと再会されたのが始まりだそうですね。
「小林聖太郎監督は2019年に藤さん主演の映画『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』(2019)をお撮りになりました。実は、小林監督は僕の助監督を長く務めてくれた方で、未だに仲良し。『初恋~』クランクアップした後、小林監督から『藤さんと一緒に食事に行きましょう』と誘われたんです。
僕は俳優さんとプライベートのお付き合いってほとんどないんです。だけども、藤さんにはずっと会いたいと思っていました。知り合いの監督の作品にご出演されていたら、現場に顔を出せば会えますし、再会のチャンスはいくらでもあったのですが、シナリオを持たずに藤さんに会うって、なんか格好悪いなと。
会う時は映画の打ち合わせで会いたいという気持ちが強かった。それまで、そうした意識があって会わないでいたのですが、たまたま小林監督からお誘いをいただいて、別にそんな肘張るようなことでもないと思い、久しぶりにお会いしたのです」
―――その時は、藤さんとどんなお話をされたのでしょうか?
「前回ご一緒した『しあわせのかおり』の話とか、僕が最初に藤さんを撮らせていただいた『村の写真集』(2004)の撮影時の話など、懐かしい話題で盛り上がりましたね」
―――久々の再会を機に、藤竜也さん主演の企画を考えられたのでしょうか?
「再会する以前から、藤さん主演の企画を考えてはいたのですが、以前撮った作品と似た毛色の脚本を作っても藤さんに失礼だし、過去作とは異なる見え方を提示する作品じゃないと作る意味がないと思っていました。藤さんに甘えて映画を作るのだけはやめたいなと。
実は、何本かオリジナルストーリーを書いてみたこともあるんですけど、結局、お見せするところまでいきませんでした。でも、2019年に久々にお会いした時、藤さん主演で新しい映画を一緒に作りたいという思いが心から湧き上がりまして。『藤さんに見せるシナリオを書きあげて、もう一度、映画を作るぞ!』という気持ちになったのです」