大傑作! 日本最高のボクシング映画は? 心揺さぶる日本映画(4)岸井ゆきのの演技が圧巻! 最高峰の傑作
血や汗や情熱やロマンが入り混じる、泥臭くも美しいスポーツ、ボクシング。そんなボクシングを題材にした映画は、日本国内で今も昔も製作され続けており、有名監督や人気俳優、実力派女優らも多く関わっている。故障や病、障害、栄光と挫折などを描き、観る者の心を揺さぶる史上最高のボクシング映画を、今回は邦画に絞って5本セレクトした。
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聴覚障害のある現実の女子ボクサー・小笠原恵子がモデル
『ケイコ 目を澄ませて』(2022)
上映時間:99分
監督:三宅唱
脚本:三宅唱、酒井雅秋
原案:小笠原恵子
キャスト:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、仙道敦子、三浦友和、佐藤緋美、中原ナナ、足立智充、清水優、丈太郎、安光隆太郎、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子
【作品内容】
両耳が聞こえない小河ケイコ(岸井ゆきの)は、下町の小さなジムで、ボクシングを始める。地道な努力が実り、ケイコはプロ試験に合格、しかもデビュー戦で勝利する。
練習に仕事もこなしながらジムで鍛えていき、彼女は2戦目も勝利する。ところが、母・喜代実(中島ひろ子)からは「いつまでボクシングを続けるの?」と問われる。ボクシングをやめてほしいと願う母の気持ちは、彼女の心にしこりを残すのだが…。
【注目ポイント】
生まれつき両耳に重度の障害を抱える身でありながら、女子プロボクサーとしてデビューし、4戦を戦った小笠原恵子の自伝小説を原案とし、監督に三宅唱を、主演に岸井ゆきのを迎えて映画化された本作。
主人公がボクシングに打ち込んでいくメインのストーリーに加え、コロナ禍の日常が鋭く描写がなされている。全ての人がマスクをし、口を隠している状態は、聾者にとっては読唇術も使えず、コミュニケーションがより難しくなる。
さらに本作では音楽がほとんど使われていない。その分、グローブとサンドバッグやミットがぶつかり合う音が、ダイレクトに響いてくる。
そして、圧巻なのがケイコを演じた岸井ゆきのの演技だ。テレビドラマなどでも引っ張りだこで多忙な彼女に与えられた準備期間は、わずか3か月。
その間にボクシング、手話、聴覚障害の演技を叩き込み、音のない世界に生きる女性という難役を見事に演じ切っている。2023年日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞に輝いたのも納得の名演だ。
ボクシング映画でありながら、悪人キャラが登場しない異色作でもある。コロナの描き方もきわめてリアル。殺伐とした世の中に放たれた一筋の光のような、美しいボクシング映画の傑作だ。
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