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観ると心がラクになる理由は? 「桃色争議」と歴史的背景をわかりやすく解説! 朝ドラ『ブギウギ』徹底考察& 感想レビュー

text by 田中稲

10月2日より放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。本作は、戦後昭和の大スター・笠置シヅ子をモデルとした主人公・スズ子(趣里)が、歌手としての道を突き進む物語。今回は、第3週で起きた「桃色争議」を中心に、物語を史実と共に振り返るレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:田中稲】

ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。

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趣里、連続テレビ小説『ブギウギ』©NHK
趣里連続テレビ小説ブギウギ©NHK

ああ、心がブギウギワクワクだけでなく「スクスク」伸びやかになる! 10月2日から始まった「ブギウギ」の心地よさは想像以上だ。主役のスズ子を演じる趣里による「東京ブギウギ」ステージの予告を観たときから、「これはいいドラマになるだろう」と思っていた。が、これほどとは!

スズ子を演じる澤井梨丘と趣里は、武井武雄や安野光雅といった昭和初期の絵本から飛び出したような雰囲気で、気持ちがいいほど邪気がない。感情表現はひたすらシンプルだ。褒められれば素直に喜び、お節介はやり過ぎ、落ち込み、調子にも乗り、寂しければ、人目もはばからずギャン泣きする。わかりやすい!

私が大好きなのが、花咲歌劇団を落ちた直後、梅丸歌劇団に一人乗りこみ、大人たちを前に自分を売り込むシーン。

「来年になったら、わて、七寸は背が伸びて花咲行ってしまいますよ。よろしいんですか、それで!」

まったく自分に興味を示さない大人に向かって強気にもほどがある自己アピール。なんとすばらしい鋼のメンタル! この必死の姿勢、営業する際、是非見習いたい、と思った。このシーンを繰り返し見るためにNHKオンデマンドにまで入ったほどである。

照れや自虐のないスズ子は、好きなもの好きと伝えることに、フィルターが一切かからない。「空気を読まない」という言葉とはまた違う、モジモジのなさ。「これをしたら笑われるかも」「裏でどう思われるだろう」と止まらず、まっすぐ相手に伝えるその姿は本当にまぶしくて、スッキリするのである。ああ、難しく考えないでいいのだ、と。

観ているこちらに「勘ぐる、裏を読む」ということをさせない潔さ。ここまで鑑賞後心がラクチンになるドラマは、久々である。

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