ヴィム・ヴェンダース監督×役所広司主演 。映画『PERFECT DAYS』第96回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート!
第96回アカデミー賞®のノミネーションが2024年1月23日(火)、ついに発表! 『パリ、テキサス』などを手掛けてきた名匠ヴィム・ヴェンダースが役所広司を主演に迎えた映画『PERFECT DAYS』が現在公開中だ。この度、世界中の映画祭を席巻している同作が、米国アカデミー賞®国際長編映画賞のノミネートを果たした。
役所広司主演作『PERFECT DAYS』が第96回アカデミー賞®国際長編映画賞ノミネート!
『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきた名匠ヴィム・ヴェンダース。彼が長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた『PERFECT DAYS』(全国公開中)。
日本の公共トイレのなかに small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)を見出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡ぎ、みごと第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞したことを皮切りに、第50回テルライド映画祭、第48回トロント国際映画祭、第71回サンセバスチャン映画祭、第60回台北金馬映画祭と名だたる映画祭に招待されるなど、世界中の映画祭を席巻。
東京国際映画祭でのオープニングを飾り大きな話題となった本作が、この度、米国アカデミー賞®国際長編映画賞のノミネートを果たした。授賞式は、3月10日(日)(※現地時間)となる。是非受賞の行方にご注目いただきたい。
ヴィム・ヴェンダース監督コメント
It’s such a great honor for me to represent Japan in the Oscars,
the country of my great cinematic master, Yasujiro Ozu.
PERFECT DAYS was carried by his spirit,
so I couldn’t be happier to see it nominated.“
Wim Wenders
「私の偉大な映画界の師、小津安二郎の祖国である日本の代表としてアカデミー賞に参加できることを大変光栄に思います。『PERFECT DAYS』は彼の魂に導かれた作品です。この作品がノミネートされたことは、私にとってこの上ない喜びです。」
こんなふうに生きていけたなら…
『PERFECT DAYS』の世界観
思いがけない出来事が、まるで風のように男の日々を揺らした。
そしてそれは光と影の踊りを生んだ。
東京渋谷の公衆トイレの清掃員、平山は押上の古いアパートで一人暮らしている。その日々はきわめて規則正しく、同じことの繰り返しのなかに身を置いているように見えた。ルーティンは孤独を遠ざけるものかもしれない。けれど男のそれはどこか違ってみえた。
夜が明ける前に近所の老女が掃除する竹ぼうきの音が響く。それが聞こえると男はすっと目をあける。少しのあいだ天井をみつめる。おもむろに起きあがると薄い布団を畳み、歯を磨き、髭を整え、清掃のユニフォームに身をつつむ。車のキーと小銭とガラケーをいつものようにポケットにしまい部屋をでる。
ドアをあけて空をみる。スカイツリーをみているのか。光を見ているのかはわからない。コーヒーを買うと手作りの掃除道具をぎっしり積んだ青い軽にのって仕事へむかう。いつもの角でカセットテープを押し込む。カーステレオから流れてくるのはThe Animals “The House of Rising Sun”.
いくつもの風変わりなトイレを掃除してまわる。その日はひょっとすると声をひとつも出していないかもしれない。掃除を終えると夕方にはあのアパートに戻る。自転車に乗り換えて銭湯へゆき、いつもの地下の居酒屋でいつものメニューを頼み、そして寝落ちするまで本を読む。
そしてまた竹ぼうきの音で目をさます。男の人生は木のようだった。いつも同じ場所にいて動かない。
同僚のタカシのいい加減さをどうして憎めないのか。いつものホームレスの男が気になる。清掃のあいまに見つける木漏れ日が好きだ。フィルムを現像してくれるこの店はいつまであるだろうか。銭湯で出会う老人が愛おしい。古本屋の女性の的確な書評を聞くのも悪くない。
日曜だけ通う居酒屋のママの呟きが気になる。今日はあいにくの雨だ。それでも予定は変えない。そんな彼の日々に思いがけない出来事が起きる。そしてそれは彼の今を小さく揺らした。