「西島秀俊の最高傑作は…?」世界的評価の高い出演作(2)。禁断の好奇心…生(性)と死が交錯する
映画『ドライブ・マイ・カー』で主演を務め、第45回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞した西島秀俊。しかし彼の魅力はクールな表情や笑顔だけではない。ただそこに存在するだけで人を魅了する説明のつかない不思議な存在感に、女性のみならず男性からの支持も厚い。そんな西島秀俊の魅力に浸れる映画を5本紹介する。(文・しばちゅう)
●現実と夢の間で交錯するカオス。ビートたけしとの豪華共演にも注目
『女が眠る時』(2016)
監督:ウェイン・ワン
脚本:マイケル・K・レイ、シンホ・リー、砂田麻美
出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ
【作品内容】
処女作がヒットして以降、スランプに陥っている作家の清水健二(西島秀俊)は、無気力なまま、妻(小山田サユリ)とリゾートホテルで休暇を過ごしていた。しかしそこで初老の男性、佐原(ビートたけし)と不釣り合いな若い女性、美樹(忽那汐里)の存在に気づく。その後も同じホテルで見かけるたびに好奇心を抑えきれず、2人の後をつけてしまうが、だんだんと行動がエスカレートし、ついに佐原の部屋をのぞいてしまう…。
【注目ポイント】
少し前、「THIS MAN」という男が話題になった。きっかけは、夢に見知らぬ男が繰り返し現れるという精神病患者。医師が男のモンタージュを作成し、仲間の医師とシェアすると、男を夢で見たと証言する患者が続々と名乗りを上げてきたー。
本作は、さしずめこの「THIS MAN」を巡る物語だといえるかもしれない。監督は、1995年に『スモーク』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したウェイン・ワン。原作は、ハビエル・マリエスの同名小説。
滞在中のホテルで佐原(ビートたけし)と美樹(忽那汐里)のカップルを目撃した主人公・健二(西島秀俊)は、「THIS MAN」である佐原と関わる中で、夢と現実、小説の世界と映画の世界が交錯するカオスへ足を踏み入れていく。
印象的なのは、健二が壁の影からじっと覗く姿。まるで往年の市原悦子のようだが、光を失ったその目は、無意識の深淵を覗いているようだ。目線の先にあるのは、ベッドで眠る美樹の姿。生(性)と死がオーバーラップする。
さて、「THIS MAN」は、その後作り話であることが明かされた。しかし、未だに彼がいない証明はなされていない。今夜、無意識の深淵をのぞくのは、あなたかもしれないー。
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