高橋一生と石橋静河の“美声合戦”が最高だった…ドラマ『ブラック・ジャック』の勝因とは? 令和版実写化、考察&感想レビュー
手塚治虫の名作漫画を原作とするスペシャルドラマ『ブラック・ジャック』(テレビ朝日系)が、2024年6月30日(日)に放送された。原作ファンのライターが、主演を務めた高橋一生の演技、物語構成など、多角的な視点で内容を振り返る。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
ドラマに深みをもたらしたもの
6月30日(日)に放送された、高橋一生の『ブラック・ジャック』。いまだ予想外の「すごかったなあ」感に包まれている。放送前から期待値は高かったのだ。というのも、秋田文庫版の原作第7巻をオマージュしたというメインビジュアルの素晴らしさ! ネットニュースで上がってきた時、ガッツポーズして「完璧かよ…」と呟いた。そのアイデアにやられ、たんすの奥に手を伸ばし、何十年ぶりに秋田文庫版『ブラック・ジャック』を掘り起こすに至った。
あったあった! 真っ黒な表紙に、リアルイラストレーター・西口司郎さんが描いた、リアルなブラック・ジャック。照らし合わせてみるが、高橋一生さん、ものすごく似ている!! ピノコ(永尾柚乃)の再現度も高く、いいぞいいぞ、この2人なら、実写化『ブラック・ジャック』も楽しみだ、と思っていた。
ところがいざドラマが始まると、2人だけでなく他キャストもすごかった。冒頭、私を釘付けにしたのは、ノーマークだった味方良介である。「手塚マンガから出てきましたよね!?」とテレビに話しかけてしまった。
法務大臣の息子でありながら危険ドラッグ中毒というヤバい奴、古川駿斗役を演じている。髪型も原作によせており、キャラクターそのまんまであった。『大奥Season2幕末編』(NHK総合、2023)の勝海舟役も好きだったが、私の中で味方良介の存在感が増し増しである! 出番は決して多くなかったが、味方があの役を演じたからこそ、このドラマは深みが出たと言いきりたい。