悪霊“さな”の正体は? 映画『あのコはだぁれ?』が提示する“新しい怖さ”とは? 3つのポイントで考察&評価。解説レビュー
Jホラーを牽引し続ける清水崇監督最新作『あのコはだぁれ?』が公開中だ。2023年に公開された映画『ミンナのウタ』のDNAを引き継ぎ、”恐怖演出”にブーストがかかる本作。今回は、これまでの清水監督異なるポイントに注目し、作品の魅力に迫る。(文・ナマニク)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:氏家譲寿(ナマニク)】
文筆家。映画評論家。作曲家。日本未公開映画墓掘人。著書『映画と残酷』。『心霊パンデミック』サウンドトラック共作。ホラー映画評論ZINE「Filthy」発行人。コッソリと外国の自主制作映画に出演する隠れ役者。
前作『ミンナのウタ』の“精神的な続編”
『あのコはだぁれ?』の清水崇監督とは、イベントでよくご一緒することがある。ビデオ版『呪怨』(2000)から24年。監督人生のほとんどをホラー映画に捧げてきた清水監督だが、時折こうつぶやく。
「ボク、いい加減に普通の映画を撮りたいんだよね…」
もちろん彼のフィルモグラフィーにはホラーではない映画が存在する。だが、殆どがホラー映画で埋め尽くされ、ホラーの名手と呼ばれてしまうのは致し方ない。さらに『犬鳴村』(2020年)のヒット以降、間を空けることなく発表し続けた作品は、工夫を凝らしたエンターテインメントホラーとして一定の評価を受けており、勢いは年々増すばかり。
前作『ミンナのウタ』は人気グループGENERATIONデビュー10周年という企画映画にも関わらず、“清水組”の強烈なホラー愛とGENERATIONの熱意ある芝居の化学反応が爆発。若者を中心にヒットを飛ばし「本当に怖い映画」の名声を手に入れた。
実際『ミンナのウタ』は怖かった。そこかしこに観られる名作ホラーへのオマージュ、「死の間際の声」を集める凶悪な悪霊“さな”の爆誕…。『ミンナのウタ』は企画映画のため清水監督は、どんな物語にしたらいいのか戸惑っていたとのことだが、蓋を開けてみれば、『呪怨』の“伽椰子”を超えるキャラクターを創造するまでに至った。
当人は「ホラーの名手」と紹介されることは好んでいない。だが、もはや存在が完全にホラーなのである。なぜなら『あのコはだぁれ?』は、『ミンナのウタ』完成前にベースとなる物語の構想はあったと聞く。結局『あのコはだぁれ?』は、清水監督からの持ち込み企画、かつ『ミンナのウタ』と同じ世界線で描かれる“精神的な続編”となった。